新着情報
2023年11月07日
卒業生ボランティア(1)大津里美さん 通信制高校合同相談会
大津里美さん
神奈川県出身・28歳
児童福祉施設 勤務
学びリンク主催の「通信制高校合同相談会」(全国40会場以上)では、各地域の通信制高校在校生・卒業生による「在校生ボランティア」「卒業生ボランティア」が運営に携わってくれています。運営に協力しつつ、来場者との対話を通して、自身の経験などを伝えています。会場では実際にどんなことをしているのか。今回は、主に関東の会場で運営に携わる大津里美さんにお話を伺いました。(聞き手:学びリンク 小林)
「自分はいてよかったんだ」と思える実感
――大津さんはいつから卒業生ボランティアに関わっていますか?
いつからというのが実は難しくて…。もともと在校生時代からずっと「体験談」(※)の発表者として参加していたんです。当時は、体験談が終わると、ほかにやることもなくて手持ち無沙汰だったんですが、そんな時に社員の方々が気軽に話しかけてくれていたんですね。そこでのお話がすごく楽しくて、だけど邪魔をしてもいけないので、お話しながら、だんだんお手伝いもするようになっていきました。
その頃はまだ「卒業生ボランティア」というのがなかったんですが、私が体験談で参加する時は必ずお手伝いもするというのが恒例になっていきました。それからしばらくして正式に「ボランティア」というのができて、「一緒にやりませんか?」と声をかけて頂いたんです。
※合同相談会の「通信制高校のしくみ講演」中に行われる「在校生・卒業生による体験談」。講演者・山口教雄との対談形式で、高校進学前の状況や実際の学校生活、卒業後の現在のことなどが話される。
――私たちとしても、まさに大津さんのような存在が卒業生ボランティアのきっかけになっていったと思います。在学時から来ているということはもう何年になりますか?
いま28歳で、高校2年生の時からなので、もう10年以上でしょうか。
――主にどの会場にいらっしゃいますか? 実際にボランティアってどんなことをしているのでしょう?
私は関東で開催されるすべての会場に参加しています。
最初の頃は受付の準備からそのまま受付業務をすることが多かったのですが、最近はほかのボランティアさんも慣れてきたので、いまは主に人手が足りていないところを任されたり、まだほかのボランティアさんでは難しいような業務を任されることが多くなりました。最近だと通信制コンシェルジュの受付や来場者の方への案内をすることが増えてきましたね。
――大津さんは経験も長いので何を任せても安心ですね。ボランティアをやっていて、やりがいを感じることはありますか?
一番は、社員のみなさんから「ありがとう」と言ってもらえることですね。「ありがとう」と言われると、「やってよかった」とか「自分はいてよかったんだ」と思えて、自分がそこに存在する意味を実感できるんです。それは普段の仕事でも同じで、私にとって「ありがとう」は、やりがいを感じられる言葉かもしれないです。
同僚から「そろそろ学びリンクじゃない?」と言われるほど楽しみになっている
――普段はどんなお仕事をされているんですか?
主に障害のある子どもたちの自立支援サポートをしています。肩書的には管理者兼保育士なのですが、勤務先が運営しているいくつかの事業所のうち1店舗の責任者をしています。事業所の管理をしつつ、現場にも入って子どもたちを支援している感じですね。
――若いのにそんな責任ある仕事を任されてすごいですね。平日はお仕事をされていて、土日に相談会があるのは大変じゃないですか?
もともと仕事人間なので、全然そこは気にならないんです。むしろ学びリンクの相談会は楽しみにやってきているので、まったく苦ではないんですね。たまに2か月くらい関東の開催がない時があるんですが、そういう時は逆に不安になるほどです。
仕事もプライベートも学びリンクの相談会に合わせてスケジュールを組み立てていて、それこそ「今週は相談会あるから、しっかり仕事を終わらせておこう」という感じで普段の仕事も取り組んでいるんです。職場の同僚も「そろそろ学びリンクじゃない?」って言ってくるくらいなので(笑)。
――それは嬉しいですね。通信制高校や今のボランティアの経験が、仕事に活かされていることはありますか?
「人と話したい」という気持ちになれたことですかね。中学時代は学校に行っていなかったので、当時は家族とかしか話さなかった。そこから新しい人と関わりたいという気持ちになれたのは、通信制高校で芽生えた感情です。それに合わせて、もともと人前で話すのが苦手だったのが、学びリンクの合同相談会に参加して、体験談で話す機会をもらえた。だから、いま前向きに仕事をしたり、子どもたちや保護者の方と関われているのは、この経験が大きいのだと思います。
10年前と同じ体験でもポジティブに伝えられるようになった
――大津さんは現在も体験談を話される機会がありますね。ご自身の中で何か気づきや変化などはありましたか?
在校生の頃は、まだ中学時代を引きずっていて、体験談を話していても感情が乱れることがありました。当時は、学校に行っていなかった経験も「やっぱり悪いことだったのかな」と迷いながら話していたので、けっこう泣いてしまうのを我慢していたりもしたんです。
だけど、いまとなっては、その経験が現在の自分につながっていることを実感できているので、同じエピソードを話していても、良い経験としてポジティブに伝えられるようになりました。
――具体的に、どんなふうにポジティブになったのですか?
いまの仕事に就いているのも、私が通信制高校を卒業する時に、今後なにをしていったら良いか迷っていた時期があったからなんです。そんな時に、当時、通っていた学習センターのセンター長が、放課後等デイサービスを始めることになり、そこに誘ってもらったのが福祉に入ったきっかけとなりました。そのあとに保育の専門学校に行って保育士の資格を取り、いまの職場につながっています。
つまり、学校に行っていなかったから通信制高校という進路に出会えて、そこで迷う時間が持てたからこそ、いまの自分の道を見つけられることができました。自分の人生を総合評価してみると、歳を重ねていくほど評価は高くなっていくんです。そんなことを、いまの体験談では話していますね。
――会場では保護者の方から声をかけられることもありますよね。どんなお話をされているんですか?
多いのは「学校を選んだ決め手は?」とか「実際3年間どうしていました?」などで、進路選択と実際の学校生活について聞かれることが多いです。あとは「いまは何をされていますか?」という現在のこと。そこで、体験談では話しきれなかったことをお話したりしています。
――大津さんとお話して、保護者の方はどんな反応をされますか?
なかには泣かれる方もいらっしゃいます。お話していて、よく親御さんから「自分が<○○>しなさい」と言っていたことは、子どもを苦しめたんですね」と言われることが多いです。親御さんなりにお子さんを思ってのことなのでしょうが、私と話しながら「もしかしたらうちの子もこう思っていたのかも」と思われるのかもしれないです。
ただ、私自身が気づきを得ることもあります。「意外と私って人の話を聞いたり、相談にのったりするのが好きだったんだな」とか、これはボランティアをやってからわかったことでした。それから、親御さんのお話を聞きながら、「自分の母親もこんな気持ちをもっていたのかな」などと気づかされることはありますね。
――なるほど、大津さん自身も来場者の方からいろんな気づきを得ているのですね。それでは、最後に合同相談会に来場される方々にメッセージをお願いします。
いま私が楽しく仕事に取り組めているのは、通信制高校でいろいろな人たちと出会ったり、自分に合った環境の中で過ごすことができて、いまの自分があるからだと思っています。
悩んだ時期もありましたが、たくさん悩みながらもやりたいことを見つけることができました。ですので、みなさんも自分自身やお子さまのいま好きなこと、むかし得意だったことなどを振り返ってみてください。それを叶えてくれる学校がきっと見つかると思います。きっとその先に良い未来が見えてくると思います。
――ありがとうございました。
▼在校生・卒業生ボランティア▼
学びリンク「通信制高校 合同相談会」では、実施会場の各地域の通信制高校在校生や卒業生がボランティアとして運営に携わってくれています。自身の経験や学校生活などをお話できますので、ご来場された方はぜひお気軽に声をかけて頂ければと思います。