【学びリンク公式SNS】
フォロー/登録よろしくお願いします!

X(旧Twitter)  Instagram  Facebook  YouTube  LINE 

新着情報

2024年05月18日

第4回 専門学校進学は“就職への決意” ◇◇『通信制高校卒業後はどうなっているの?』(6回連載)

◎専門学校は「就職するための予備校」

卒業時専門学校(各種スクール含む)進学率を見ると、2021年度卒業生(卒業2年後)の専門学校進学率は約29%(398人)、16年度卒業生(卒業7年後)も偶然ですが約29%(380人)でした。専門学校進学率は、調査対象者で3割弱、通信制高校全体でも20%代半ばの比率を占めており通信制高校からの主要な進路となっています。

そんな専門学校ですが、改めて「専門学校とは?」と自問していただくとどんな回答になるでしょうか。

専門学校に詳しいライセンスアカデミー(東京都新宿区)の尾高忠明さんは、こう言い切ります。
「専門学校は就職するための予備校」。
将来、働くために必要な専門教育が総授業時間の約8割を占め、実習が中心の学びになります。宿題や課題が出る学校もあります。
通信制高校と比較すれば柔軟な選択肢はなく、あらかじめ用意された独自カリュキュラムで勉強します。融通のきく通信制高校と比べると大きなギャップがあります。

このギャップを乗り越えるためには、「専門学校に行くならその先の就職を真剣に考えた選択になる」と尾高さんは強調します。その実現のために本当に通学できるのか自分と向き合うしかないというのが専門学校選びで肝心なところです。

◎退学は学生・学校双方にデメリット






表1で見るように21年度専門学校進学者の卒業後2年間の途中経過を見ると、最も多いのは「在学中」(約85%)の人たちです。一般課程や各種スクールなど1年制と思われる学校では「卒業した」(約4%)人もいます。2年後現在も、約84%が在学中です。
一方、16年度卒業生の卒業後7年間の途中経過を見ると約78%が卒業しています。7年後現在では約72%が在職中で、学んだそれぞれの分野で活躍しているのだと想像できます。

表2では、専門学校進学者で退学した人のその後を追っています。21年度卒業生で「退学した」という人は約12%(46人)となっています。専門学校退学率は、6~7%(※)とされますからこの間の退学率は専門学校平均の2倍程度となります。
※出所:令和4年度専修学校各種学校調査統計資料(東京都専修学校各種学校協会、東京都私学財団)

前回、大学進学した卒業生の状況でも触れましたが、専門学校進学者も一般学生に比べて退学率が高くなっています。
実は一部の大学や専門学校では通信制高校卒業生には積極的に門戸を開いていない学校もあります。その背景は、この退学率の高さにあります。
学生自身が退学思考や行動を切り換えること、学校側が退学防止を徹底すること、ともにかなりの労力を要することです。

「退学した」人の2年後現在の状況を見ると「在学中」と再入学した人が約11%います。学ぶ分野を再検討したものと見られます。自由記述回答を見ると「通信制高校出身だったので専門学校の週5日はきつくて最初から自由度のきく学校選びをしていればよかった」という記述もあります。
社会に出た際に即戦力となる人材育成や資格取得を目指すのが専門学校の特徴であり、メリットでもありますから密度の濃い教育内容となっています。志望分野が固まってきたらその分野での専門学校同士の比較も重要となりそうです。

退学後「在職中」「アルバイト」「求職・訓練中」を合わせると約56%が働く方向に動いています。専門学校進学は働くことを意識した学校選びを経ているので感性としても働くことへのハードルが高くないものと推測できます。
退学して働いている人の自由記述回答を見ると「自分の行きたい道と違って辞めましたが、今は正社員になるため見習いバイトをしています」「1年通学しましたが方向性が変わりバイトをしながら自分探しをしています」と自身に対する肯定的見方が見受けられます。

退学後「何もしていない」という人は約26%となっています。「何もしていない」人の自由記述回答は21年度卒業生、16年度卒業生ともに少なくなっていますが「本当に何もしていない」「特になし」などがあります。
繰り返しになりますが、「何もしていない」とは“働く”や“学ぶ”手前でどうすればいいのか分からない状態ではないかと見ています。ちょっと苦しい状態ではないでしょうか。

◎「退学」→「何もしていない」が増える

一方、16年度卒業生の7年間の途中経過を見ると「退学した」人は約21%(80人)と専門学校退学率に比べるとかなり高い比率になっています。「退学した」80人の7年後現在を見ると、「在職中」という人が最も多く約53%を占めていますが、次に多いのは「何もしていない」という回答で35%となっています。

「在職中」という人の自由記述回答には「専門学校に進学しましたが対人関係で進めなくなり退学しました。その後結婚。高校卒業資格を持てたことは大きな事で、派遣から正社員へと少しずつですが社会に馴染めるようになってきたと思います」という卒業校への感謝の言葉も見られます。

16年度卒業生で、専門学校進学→卒業→在職中の人たちの自由記述回答を見るとそれぞれの人に紆余曲折があります。専門学校で得た資格を活かす人、それとは異なる方向を目指す人とさまざまです。次のような回答がありました。
「政令指定都市の公務員に就職。その後退職し、現在は医療系の分野で開業届けを出し働いている」
「マンガ系の専門学校を卒業するもマンガを描くのが辛くなり、無職を経てマンガとは無関係の自営業になりました」
「保育系の専門学校卒業後、保育士資格、幼稚園教諭二種免許取得。福祉保育系の職に入社。社会人四年目」
「美容関係の資格をとり、店長として働いている」。

◎決意の固さが肝心

専門学校の団体がまとめた調査データから専門学校の退学理由を見ると、①進路変更(約32%)、②健康上(約16%)、③学力不足(約14%)、④経済的(約7%)、⑤その他(約31%)となっています。その他には、家庭の事情、留学生の帰国、学習意欲の低下、一身上の都合、人間関係などがあがっています(※)。

この退学理由を専門学校の学ぶ分野別に見たのが図1です。専門分野は表3のように8つの専門分野に分かれ、学科が置かれます。

※、図1
出所:令和4年度専修学校各種学校調査統計資料(東京都専修学校各種学校協会、東京都私学財団)






専門学校も退学防止の取り組みや工夫をいろいろと行っています。「クラス担任制」「2者・3者面談」「補講」「健康相談」「カウンセリング」「コミュニケーション講座」「レクリエーション」など意欲を喚起するような取り組みが行われています。

学生時代はとかく気持ちに波ができやすいものでしょう。この退学防止策を活かすためにも振り出しに戻りますが「専門学校に行くならその先の就職を真剣に考えた選択になる」という決意の固さが大切になります。

※文中にある「卒業後2年後」「卒業後7年後」とは、調査時期の関係で前者は卒業後1年8カ月~10か月、後者は6年8カ月~10か月の時期になります。