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新着情報

2024年06月19日

第6回 卒業後を見越して考えておきたいこと◇◇『通信制高校卒業後はどうなっているの?』(6回連載)

◎誰もが「何もしていない」状態になり得る

今回のシリーズ『通信制高校卒業後はどうなっているの?』は、新しい学校の会(桃井隆良理事長、略称:新学会)が行った3回目となる大規模な通信制高校卒業生アンケート調査結果から卒業時進路区分ごとに実情を報告してきました。

通信制高校卒業生調査の実施背景は、卒業時、卒業後に懸念されるものがあることです。それは主に次の3点と報告しました。

① 卒業時「進路未定」率の高さ
② 大学、専門学校進学者の退学率の高さ
③ ①及び②の退学後の「何もしていない」率の高さ

新しい学校の会が調査を続けているのは、通信制高校から次の進路へのステップが踏み出せず、社会参画するための土台が学校生活のなかで培われていないという懸念があるからです。
卒業時進路未定の多さばかりでなく、その後どの進路先でも「何もしていない」層が一定割合存在し、長引く様子があります。

「何もしていない」とは“働く”や“学ぶ”手前でどうすればいいのか分からない状態と見られます。
「何をしたいの?」と問われても、「それがわかればやってるよ……」という心境です。

下の表で見るように、卒業後「何もしていない」人の比率はどの進路でも一定割合存在します。
卒業時進路未定の人の卒業2年後、7年後現在の「何もしていない」比率は、約32%、約48%と高い比率になっています。
課題の第1は、卒業後進路を(自分なりに)選ぶということでしょう。進んだ進路が自分の思っていたものと違うことはよくあることです。それによって進路変更するにしても、まずは自分が選んだものだから自分で変更する(できる)という感性が大事になります。

課題の第2は、進学者、なかでも4年制大学、専門学校進学者の退学後に「何もしていない」比率が高いことです。卒業年で見てもらうと、7年後現在の人は大学進学者約16%、専門学校進学者約18%が「何もしていない」層となっています。在学後半で学業継続が難しくなる要因があって退学、その後「何もしていない」人が目立ちます。これらの人は相談する相手も見当たらないのが現実のようです。




この調査結果から推測できるのは、通信制高校卒業生の誰もが「何もしていない」状態になり得るということではないでしょうか。
通信制高校は、多様な生徒を受け入れ、卒業まで導くのが役割です。各校の卒業率を見ると、その役割を果たしている学校が増えて来ました。

その一方、卒業生へのアプローチは一部の通信制高校を除きほとんどされていません。“恩師と卒業生”というような私的な関係はよくあることですが、相談したい卒業生が相談できるような仕組みを持っているのは例外中の例外なのが現実です。

◎調査のまとめ(「何もしていない」への対処を中心に)

1. 通信制高校卒業後進路区分の各段階にある「何もしていない」は、“働く” や “学ぶ”の手前で苦戦している状態と見られる。

●「どんな仕事をしたいですか?」「何を学びたいですか?」と問われても思い浮かばない。「それが分かれば動いてるよー」という状態。
● 早期離職や退学後に「何もしていない」というブランクがあると自信を失う場合が多い。自らを“ニート”“ひきこもり”などと否定的に見がち。
● 卒業時「進路未定」の場合、「何もしていない」状態が長引く傾向にある。卒業から2年以内に母校などから交流や情報提供などのアプローチがあると動きやすいのではないか。

2. 「何もしていない」状態への対処として高校時代から相談・キャリアカウンセリング機関や地域若者サポートステーション(通称サポステ)などにつながる体験学習などがあるといざというときに効果的と思われる。

● サポステは、生徒自らの登録が必要なため意外に利用のハードルが高く在学中に近隣のサポステ(全国177か所)との交流機会があるとよい。講演会、イベント共催など。
● サポステの中にはコミュニケーション講座、資格取得講座、職場体験などを行っているところもあり、これらを利用することも効果的。
● 学校が無料職業紹介の届出を行っていれば卒業生への就職支援ができる。

3. 長いスパンを想定した高校時代からの進路計画作り・見直しを身につける。

● 当面の進路が自分の思いに叶わなかったとしてもいろいろな再構築手順があることをスキルとして身につけられるとよい。
● 専門学校卒業までを想定した “5年計画” 、大学卒業までを想定した “7年計画” 、20代半ばまでを想定した “10年計画” 、30歳前後までを想定した “15年計画” などさまざまなスパンでの計画作りが可能であることを知るトレーニング。


今回は、『卒業後を見越して考えておきたいこと』についてご説明しました。いかがだったでしょうか?
本シリーズは今回で終了します。

次回からは、新シリーズ『2024 通信制高校学費最新事情』(3回連載)についてご説明します。

新シリーズもどうぞよろしくお願いします。