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未来高等学校 熊本学習センター
2024年11月05日
「高校卒業」「福祉・医療」「卒業後の進路」の支援で無理なく先へ(熊本県・通信制高校)
学びリンクは10月4日(金)、未来高等学校 熊本学習センター(熊本市東区)を取材。同校は『不登校専門』の通信制高校で、“無理なく高校を卒業” できるしくみと充実した支援があります。副所長の石本圭佑さんから詳しいお話を伺いしました。
熊本県熊本市東区健軍にある未来高等学校 熊本学習センター。スクーリング・特別活動とレポートを必要最低限に抑えた「基礎コース」と、学習センターへ最大週4日通える「標準コース」から学び方を選べます。
▲2024年4月に移転した、新しい2階建ての学習センター
在校生のほとんどが不登校経験者で、3~4割の生徒は発達障害や起立性調節障害、うつ病など病気や障害がある中で高校卒業を目指しています。
そんな生徒たちが安心して、無理なく卒業できるよう、スクーリングやレポートの普段の学びだけでなく、「訪問支援」「同行支援」「病院連携」の福祉・医療や「高校卒業後の進路」のサポートを充実させています。
支援を拡充してきたことについて、石本さんは、「いろいろな事情で高校を卒業できない生徒がここではちゃんと卒業できるようにと、生徒にとって必要な支援を取り入れていくうちに充実していきました。福祉・医療との連携やインターンシップ先などは、生徒がもともとお世話になっていたところや我々が探したところに出向き、関係を築いてきました」と振り返りました。
生徒一人ひとりに合った支援を行うため、入学時には面談を行っています。高校に入るまでの経緯や日々の生活や学習で困っていること、苦手なことなどを聞いて、どのような支援が必要か検討し、生徒に合わせて計画を立てていきます。
▲各階にある面談室。定期的に面談を行うため、来校される保護者も多い。
例えば、引きこもり状態で外に出ることが難しい場合には、「訪問支援」をします。訪問するのは、長年、引きこもりや不登校の子たちへの支援経験がある先生のため安心です。
まずは、おしゃべりやゲームなどをしながら、先生と信頼関係を築くことから始め、関係ができてきたら外出の練習です。近くのコンビニなど目標を決めて、少しずつ外出する範囲を広げていきます。その後、学習センターで勉強する時間、日数を増やしていきます。最後はスクーリングに参加できるよう、一緒に公共交通機関を利用して、会場まで行く練習を行います。このように、スクーリングを目標に、スモールステップで練習していきます。
「病院連携」は、まだ医療に繋がっていない、医療を希望する生徒への病院の紹介や、生徒が通院している病院の医師との情報交換・共有などです。受診時に、未来高校の先生が同行する支援も行っています。
進路サポートでは、将来に不安を感じている生徒に、働く練習となる「職場体験」や「インターンシップ」を組んだり、大学・専門学校の見学に一緒に行ったりします。
就労移行支援や就労継続支援A型・B型など福祉的な進路にも精通している先生がいるため、どの進路が自分に合っているか一緒に考えていけます。
インターンシップでは、提携企業の飲食店や工場、神社などが10社以上あります。コミュニケーションが苦手、働いた経験がまだない生徒でも安心して参加できる企業です。最初は提携企業で興味のあるところで体験し、その後、本人が探したところに挑戦してみることもできます。
大学・専門学校の見学は、オープンキャンパスに参加することが難しい生徒向けに、先生が自ら大学・専門学校にお願いし、生徒数名での学校説明会・見学を組んでいます。
同校では、高校卒業後3年間は在校生と変わらず、就職・進学の進路サポートを受けられます。焦らず、ゆっくり、先生と一緒に体験しながら、自分の道を探していけます。
また、卒業に必要不可欠なスクーリングも工夫されています。鶴屋百貨店(熊本市中央区)で年2回、それぞれ6日間程度日帰りで行っており、特別活動も含まれています。
スクーリングに参加できなかった場合は、その生徒に合わせて、振替のスクーリングを組んでいきます。
石本さんは、スクーリングについて「発表活動や学校行事はなく、特別活動も授業と変わらない形で進路について考える時間を設けることが多いです。これなら卒業できそうと思って入ってくる生徒が多いですね」と話しました。
スクーリング中は授業する教員とは別に、もう一人、教員を配置しています。体調不良など万が一の時もサポートできる体制をとっています。
また、保護者同伴のスクーリングも認めています。石本さんは、「1年生にとって最初のスクーリングでは、1年生の半分くらいの親御さんが一緒にこられます。となりに座って一緒に授業を受けることも、部屋のうしろで見守ることも、外で待機することもできます。親子でのスクーリングが全然浮かず、周りの目も気にならないと思います」と言います。
学習センターには、標準コースの生徒が午前か午後どちらか、週1~2回登校する生徒が多いそう。10名程度の生徒がそれぞれの時間を過ごしています。
レポートに取り組む生徒が多く、わからないところは先生が個別に教えます。同校のレポートは紙ですが、文字の読み書きが苦手な生徒には合理的な配慮を行っています。
専用アプリでのレポート問題の読み上げや、パソコンや音声アプリでの入力が認められています。アンダーラインの補助やレポートサイズの拡大などにも対応しています。
▲1階のメインの部屋。広くて、綺麗で、使いやすいと生徒たちにも好評
▲毎週木曜日はレクリエーションの時間があり、ボードゲームなどを楽しむ
先生・スタッフは19名おり、教員免許のほかに、「社会福祉士」「産業カウンセラー」などの資格を持つ先生もいます。
不登校や病気・障害の専門知識とその理解がある先生たちが、生徒一人ひとりに合わせてできる限り工夫をし、一緒に高校卒業とその後の進路をサポートしています。
(取材・記事/学びリンク編集部 柳野安海)