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新着情報

2024年10月12日

私立通信制高校の全国組織「私通協」が教育活動研究会を開催

 

全国私立通信制高等学校協会(私通協)が10月11日(金)、東京都千代田区で「教育活動研究会」を開催した。会場とオンラインのハイブリットで実施され、全国の私立通信制高校関係者約60名が参加した。文部科学省で進められている「高等学校教育の在り方ワーキンググループ」における通信制高校の状況や、今後の教育の在り方に対する実践事例などが発表された。

 

(開会挨拶を行った吾妻俊治会長:東海大学付属望星高校校長)

 

第1部の基調講演では、文部科学省「高等学校教育の在り方ワーキンググループ」で委員を務めるYMCA学院高校校長の鍛冶田千文さんが、高校通信教育の課題と可能性について講じた。

 

2022年から実施されているワーキンググループは、昨年8月に中間まとめを報告。報告では、通信制課程の在り方について「少ない登校回数下での生徒の人間関係構築の重要性」や「教育の質の確保・向上の必要性」などが指摘されている。

 

一方、全日制・定時制課程の変化も大きい。柔軟な教育課程を編成する学びの多様化学校の設置が促進されるほか、授業時数3分の2以上という慣例的な出席要件から一人ひとりの実情に応じた柔軟な単位履修・修得を認める運用など、不登校生徒に対する具体的方策が示された。

 

また、国は今年4月、これらの中間まとめを踏まえて、全日制課程の生徒が通信制課程との学校間連携・課程間併修により上限36単位までを通信教育によって修得可能とする制度改正を行った。

 

報告を行った鍛冶田さんは、これらの動向により「今後、全定通の垣根がなくなっていく」と指摘。全日制高校においては、すでに近年、通信制課程を新設する動きが見られる。一方で「通信制課程の新設は人的にも体力的にも負担がある。今後、全日制高校が別の通信制高校と学校間連携を進めていくことが大きなポイントになるのではないか」と、通信制高校の今後の可能性を伝えた。

 

ワーキンググループの議論を通して、鍛冶田さんは「特に広域制通信制高校について厳しい見られ方をされている」と指摘。また「ネット中心でどういった力がつくのか」「人間関係の構築などはどんな取り組みをするのか」といった議論が出ていると話す。

 

一方、多様な生徒に対するセーフティネットとしての役割は理解されているものの、その中でスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置なども指摘されており、鍛冶田さんは「私学に予算がつかない中でそうした要求が出ている。もう少し頑張らないといけない」と私立通信制高校が置かれている状況を伝えた。

 

また、ワーキンググループの方向性について「当初は日本経済に寄与する人材育成を目的とした印象を持っていた。私が思うに、生徒が幸せになる、元気になることで家族が生き生きする、それによって日本社会も変わっていく。彼らが5年後も10年後もウェルビーイングで生きていけることが実現すれば、結果的に日本経済、日本社会も変わっていける」と、自身のとらえ方を示した。その中で「生徒たちには伸び伸び育ってほしい。良い学校、良い成績といった価値観ではなく、あなたがいてくれるだけでいいと、みんなの幸せにつながっていくこと。それが通信制高校でやっていけることだと思う」と総括した。

 

(基調講演を行ったYMCA学院高校の鍛冶田千文校長)

 

第2部の実践発表では、「自律的学習者」の育成を目指すクラーク記念国際高校の活動事例が報告された。

 

同校では「学力の向上」「グローバルスキルの向上」「非認知能力の向上」の3つを柱に、21世紀型教育を目指した独自プロジェクトを3年前からスタートしている。「未来の社会で活躍できる人材」をゴールに据え、「進路決定率100%」「自律的学習者の育成」「探求を中心としたカリキュラムづくり」など、逆算思考の全体イメージを体系化し、すべての学習拠点で実施可能な体制を整えている。

 

発表を行った教務開発部の阿部賢太さんは「プロジェクトスタート時から生徒自身の多様化、学び方の多様化も見られた」とし「集団教育の限界が見えてきたタイミングだった」と振り返る。そこで、学校を強化することよりも生徒自身を伸ばすことに視点を置くようになったと経緯を説明した。

 

探求学習については、独自開発した教材のほか外部教材も導入する。阿部さんは、広域通信制ならではの特性として「良い事例があっても横展開ができないことがある。一つの教材を全キャンパスに取り入れ、一元化することで、横で支え合っていく構造が構築できる」と利点を説明。また、探求学習の仕方がわからない教員がいても「教材を通してつながっていける」と教員のスキル向上の一助にもなると説明した。

 

教育体制の整備については「現場の教員が全体像を把握することで、自分がいまどの部分に関わり、生徒のどのパーツを埋めているのか、などを考えながら日々生徒との関わることができる」とし、ゴールが見えることで各教員が目的を明確にできると説明した。

 

その後の質疑応答でも組織体制や運用に関する質問が相次ぎ、自校での研修を希望する声も目立った。

 

(実践発表を行ったクラーク記念国際高校の阿部賢太先生)

 

会の終了にあたり挨拶をした理事の林周剛(八洲学園高校校長)さんは、「先生方のお話を聞く中で自校でも試したいと思うところが多々あった。みなさんと事例を共有できる点が私通協の意義や存在価値。今後もいろんな情報交換をしながら、通信制高校の発展に寄与していきたい」と総括した。

 

(終了の挨拶を行った林周剛理事:八洲学園高校校長)

 

(参加者からは多数の質問も寄せられた)

 

全国私立通信制高等学校協会は1971年に発足。通信制高校の社会的地位向上を目指し、現在は教育の質向上や各学校間の情報共有、行政への要望活動などを行っている。この日行われた「教育活動研究会」は今回で3回目。なお、来月11月11日(月)には「第3回学校運営研究会」も開催され、文部科学省担当者による講演も予定されている。大阪市の「大阪私学会館」で実施されるほかオンラインでも配信される。

 

(取材・文/学びリンク 小林建太)

 

10月14日(月・祝日)千葉県・千葉市通信制高校・サポート校合同相談会

10月20日(日)沖縄県・那覇通信制高校・サポート校合同相談会

10月26日(土)埼玉県・大宮通信制高校・サポート校合同相談会

10月27日(日)宮城県・仙台通信制高校・サポート校合同相談会

11月4日(月祝)神奈川県・横浜通信制高校・サポート校合同相談会

11月9日兵庫県・神戸通信制高校・サポート校合同相談会

11月10日(日曜)広島県広島市通信制高校・サポート校合同相談会

11月16日(土曜)東京都・町田通信制高校・サポート校合同相談会

11月17日(日曜)京都府・京都市通信制高校・サポート校合同相談会

11月23日(土曜)愛知県・名古屋通信制高校・サポート校合同相談会

11月24日(日曜)大阪府・梅田通信制高校・サポート校合同相談会

12月1日(日曜)東京都・新宿通信制高校・サポート校合同相談会