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2025年08月24日
「逃げ道を作って、新たな入口に」 「不登校生動画甲子園 2025」表彰式
8月24日(日)、横浜市開港記念会館 講堂(神奈川県横浜市)にて「不登校生動画甲子園 2025」の表彰式が行われました。
「不登校生動画甲子園」とは、不登校を1日でも経験したことのある13歳以上20歳未満を対象に、「不登校で見つけたこと」をテーマに制作したTikTok動画を募る動画コンテスト。
3回目を迎えた今年は、昨年の約2倍となる432作品が全国から寄せられ、8人のファイナリストが表彰式に集まりました。
表彰式では審査委員長のロバート キャンベルさん(日本文学研究者)をはじめ、アンバサダークリエイターのわたげさん(動画クリエイター)、枝優花さん(映画監督・脚本・写真家)、斎藤環さん(精神科医)、石井しこうさん(不登校ジャーナリスト)、佐藤陽一さん(TikTok APACゼネラルマネージャー)が審査委員をつとめ、ファイナリストの発表を見守りました。
開会の挨拶に立った佐藤さんは、「多くの方々が、不登校や苦しい経験を糧にして、自分が表現したいことを形にして応募してくれました。TikTokという場が、もやもやしている気持ちを表現できる場、ちょっとでも自分が世界を変えていけると思える場であれたら嬉しく思います」と話しました。
今年からの新たな試みとして「特別審査委員制度」が導入され、不登校を1日でも経験した当事者、もしくはその家族120名が、表彰式の審査委員として参加。不登校当事者のリアルな声がより審査に反映される形となりました。
表彰式では、ファイナリスト8名の作品が披露され、一人ずつ作品に込めた思いをスピーチしました。スピーチを終えたファイナリストには、審査委員が評価のポイントを直接伝えていました。
厳正な審査を経て、最優秀賞を受賞したのは、新潟県のひなさん(15)。
過去に人から投げかけられた心無い言葉や、自身が感じた劣等感を赤裸々につづり、絵を描くことで救われたという自身の経験を動画に込めました。
現在中学3年生で、小学校4年生から不登校だというひなさんは、「不登校を通じて『逃げ道』を見つけた」と言います。
「昔はとにかく生きる意味がないと思っていたけれど、絵を描くことで自分が楽になれる方法を見つけられた。『逃げる』と聞くとマイナスなイメージがあるかもしれないけれど、『逃げ道』を作ることで、その先の人生が楽になっていく。『逃げ道』を作っていいんだよ、ということを伝えられたら」と作品に込めた思いを話しました。
審査委員長のロバート キャンベルさんは、ひなさんの作品を「良質な短編映画を見ているよう」と称賛。
「不安な気持ち、外見を悪く言われたこと、劣っていると感じたこと、むきだしの言葉の数々が日常風景に重なることで、そのメッセージ性が強化されている。逃げ道を作ったことで、新しい何かの入り口ができたことが、作品からひしひしと伝わってきました。来年参加したいと思う人にとっても、このメッセージは一つの灯になると思います」と述べ、「動画としての完成度の高さ」と「メッセージ性」を評価ポイントに挙げました。
最後に、審査委員の石井さんは今回の参加者に対して「みなさんには、たくさんの後悔をしてほしいと思います」と話しました。
「どの作品も素晴らしく、本当に審査するのが難しかった。受賞を逃したみなさんも、もっとこうしたら良かったかも、といった思いがあると思います。その『後悔する』気持ちが、次につなげる力になります。『こんな自分じゃだめだ』と思っている人もいるかもしれない。でも、その答えは自分のなかにあるはず。自分なりの道を、きっと見いだせると思います」とエールを送りました。
文部科学省の調査では、2023年度の小・中学校の不登校児童生徒数は34万6千人に上ります。
夏休み明けは、学校に行くのが辛いという子どもが増える時期。
同じ経験のある仲間からのメッセージを届けるため、表彰式はこの時期に開催されています。
式を終えた後、ロバート キャンベルさんから、学校がつらいという子どもたちに向けてメッセージが送られました。
「私は先日、ウクライナから仕事で帰ってきたばかりです。現地では、絵画教室でアートセラピーを受ける子どもたちに出会いました。いわゆる健常者の子もいれば、疾患のある子など、さまざまな子どもが同じ場所にいました。現地には毎日砲撃があり、私がいた近くにも着弾がありました。子どもたちにとっては、その教室が心のシェルターになっていて、何か打ち込めるものを見出し、お互いに支えあっているようでした。今日、何かに打ち込み、それを心の支えにする人たちの作品を見て、その可能性をひときわかみしめていたところです。学校に行くのがつらい人は、まず信頼できる大人や友達に相談をしてほしい。仮病を使ってもいい。大人だってやっていますから、悪いことじゃありません。一人で抱え込まないで、誰かを頼ってほしいと思います」
「学校に行った方がいいとも、学校に行かなくてもいいとも思わない。人と違うことを恐れないで」
「不登校で見つけられたものなんてない、失ったものばかり」
「不登校の時間があったからこそ、好きなこと、打ち込めるものが見つかった」…
ファイナリストの作品には、「不登校」という時間に対してどう向き合い、何を感じたかがつづられており、一つひとつがまったく異なるものでした。
受賞作品はTikTokで見ることができます。「不登校」という時間をどうとらえ、今につなげているのか、それぞれの思いをぜひご覧ください。
(取材・文/学びリンク編集部 小野ひなた)
「不登校生動画甲子園 2025」受賞作品(TikTokより)
【最優秀作品賞】ひなさん
https://vt.tiktok.com/ZSAASF1GK/
【審査委員長賞】Mao-nekogamiさん
https://vt.tiktok.com/ZSAAS6r8X/
【アンバサダークリエイター賞】reima_planetさん
https://vt.tiktok.com/ZSAASL9aT/
【優秀賞】
・chocochandaoさん
https://vt.tiktok.com/ZSAAS6hjj/
・木ノ木きのさん
https://vt.tiktok.com/ZSAAS6kXJ/
・しほさん
https://vt.tiktok.com/ZSAABKNa3/
・むとーこーちゃさん
https://vt.tiktok.com/ZSAAS6U1V/
・3DCGのsumaさん
https://vt.tiktok.com/ZSAASg6DM/
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