生きること・働くこと⑨ 従業員も“神様”です
2018年10月1日
夏休みともなると、島と島を結ぶ船には、子どもたちがたくさん乗り込んでくる。(マーシャル諸島) |
では、対する従業員は何でしょうか。客が神様なら従業員は奴隷でしょうか。私は、ホテルの仕事をしているときに従業員に次のように話しました。
「私たちはお客様がいるからこそ仕事ができるので、お客様は神様です。食事でも結婚式でも100%満足していただくおもてなしをしなければなりません。そして“幸せだなあ”と思ってもらうことが私たちの目標です。そのためにはサービスを提供する私たちも幸せでなければなりません。“お客様も幸せ、従業員も幸せ”という職場にしていきましょう。お客様は神様、従業員も神様です。神様のような立派な、そして幸せな人間になりましょう」
接客商売では、客の粗相で服を汚しても、従業員の責任にされることがあります。客に怒鳴られ、謝っても許してもらえず、菓子折を持って上司と客の自宅までお詫びに行くこともあるでしょう。そんなときでも客の機嫌がよくなるようにしなければなりません。上手な人は、へりくだりながらも道理を通し、最後には客から「誠意をもって対応してくれた」と信頼を得る高等テクニックを持っています。そういう意味では、従業員は客以上に神様らしくなければならないのかもしれません。
太平洋に浮かぶ南の島、マーシャル諸島で聞いたことですが、若い人から年寄りまで乗った船が遭難したとき屈強な若者から亡くなっていくそうです。なぜかというと、船にある食料が少なくなったとき子どもや年寄りから先に食べさせるからということでした。魚を捕るのは若者でしょうし、助かる可能性も高いでしょうが、元気な人間よりも弱い人間を守るという考えなのです。南の島では普段から年寄りや子どもを大事にします。それが最後の最後の極限状況になっても守られるということに感激しました。
この話は教訓めいた寓話かもしれませんが、私たちがめざす理想の人間関係を表しているようにも思えます。「おもてなし」でもそうです。相手を思いやる心を持ち、犠牲的な精神で接する、しかし卑屈にはならず、プライドを持って自分が理想とするサービスをめざす――私は、接客の心は南の島の若者の心に通じると考えます。
次回は、「人はなぜ働くのか」について考えてみます。