「気になりますね!通信制高校」
新刊書籍から読み解く不登校対応①
『不登校からの進路選択(自分の歩幅で社会とつながる)』から
2021年8月17日
◇◇新刊書籍から読み解く不登校対応
第1回『不登校からの進路選択(自分の歩幅で社会とつながる)』から◇◇
今回は、この5月に学びリンクから発行された『不登校からの進路選択(自分の歩幅で社会とつながる)』(福本早穂 著)から不登校の回復過程におけるエネルギー量に合わせた不登校対応をご紹介します。◎エネルギー回復過程を考えて子どもを見る
本書は、不登校を経験した子が成長する過程で進路を決めていくとき、エネルギーの回復過程に合ったサポートの必要性を述べています。不登校を経験した当事者、その家族の声など事例も多く収録されています。
著者の福本早穂さんは、不登校親の会「親子支援ネットワーク♪あんだんて♪」(京都市)代表で、臨床心理士でもあります。24年前、当時小6だったお子さんが不登校になったのをきっかけにカウンセリングや心理学講座に通い、その後子どもの不登校を経験した母親9人とともに2003年に「あんだんて」を設立しました。当初から独立した事務所を持ち、18年間も親の会を継続しています。その後、大学院でも学び16年に臨床心理士の資格を取得しました。
福本さんのように、(不登校児の母という)当事者、支援者、カウンセラー、研究者という視点をもった方はたいへんまれな例だと思います。
本書の不登校の回復過程におけるエネルギー量とは、下の図で見るように「渋滞期」(行くと休むの繰り返し)、「葛藤期」(完全不登校になったとき)、「安定期 前期・中期・後期」(心身ともに休むとき)、「始動期」(動き出したくなるとき)―の6段階のプロセスを経て活動期があります。
過程ごとに子どもの状態を見極める目安となる状態像が示されています。例えば次のようなものです。
「渋滞期」朝起きられなくなる、朝の支度に時間がかかる、玄関で立ちすくむ など
「葛藤期」ご飯を食べなくなった(家族と一緒に食べない)、眠れない、ずっと眠り続ける、何気なく言った言葉に反応して怒る など
「安定期・前期」夜寝られるようになる、ご飯が食べられるようになる、ときどき笑顔が見られるようになる など
「安定期・中期」家族と外出する、安定した昼夜逆転とネット・ゲーム など
「安定期・後期」好きなことのために行動を起こす、行きたい場所へ行く など
「始動期」ひま・退屈とつぶやく、好きなこと・やりたいことで第三者とつながる など
見守りやサポートのポイントは、子どものエネルギーがどの程度回復しているか、子どもの状態を理解しながら進めていくことです。各段階での不登校をしている子どもの当時の心情が収録されていて気づきを与えてくれます。 本書では、「進路選択」というタイトルがついていますが、中学から高校、高校から大学や専門学校と年数で区切られた学校の時間軸ではなく、一人ひとりの人生という時間軸に合った過ごし方や環境が本来のエネルギーを引き出すことを知って欲しいと述べています。
学校への進路という点では、不登校から望んだ学校に入ったとしてもすぐに行けなくなるという場合もあるという想定をしておくことだといいます。一番に考えるのは入ってからどうやって学校生活を続けられるか見ておくことが大切と述べられています。
◎お母さんも支えてもらう必要があります
24年前、福本さんのお子さんが小6で不登校になったとき、当時は相談機関も少なく、ネット情報もなく、教師をしている友人に相談しても、関連の本を読んでも自分が責められているようで、福本さん自身悩みは深くなるばかりだったといいます。
そんなある日、ふと気がついたのだと述べています。
「悩んで暗い気持ちで過ごしても一日。楽しく明るい気持ちで過ごしても一日。同じ一日を過ごすなら、私は不登校のこの子と笑って過ごしていこう」。
母親が子どもを理解・受容しても、周りに責める人がいるとつらい気持ちになり、その暗い表情が子どもに伝わり、子どもは自分のせいでお母さんを苦しめていると罪悪感から元気になっていかないものだといいます。
お母さんが元気を取り戻すには3つの要件があるといいます。
• お母さんのつらさや苦悩を理解し、受け入れて聞いてくれる人がいること。
• わが子といえども、不登校は初めての経験なので、子どもが理解できない行動をしたり、原因のわからない症状が出たりします。そのわけを理解できるように通訳してくれる人がいること。
• その時々に必要な情報が得られること。
不登校の回復過程では、親御さんが支えてもらえる場所を見つけることも、一つのポイントとされます。
一方、親の“覚悟”も重要になってきます。
例えば、私立通信制高校への進路が決まった場合。嬉しいのと同時に、現実では安くない納入金額が必要になります。
そんなとき福本さんは、こう提案しています。
『実際にその金額の札束をテーブルに置いてみて、「これが風に飛ばされてなくなったとしたら、どうだろう?」と想像してみてください。諦められるか諦められないかはその家の経済事情などによりますが、要は、親の腹がくくれる落としどころをつかむことだと思います』。
そして、面白いことに不登校の間に親子関係は良くなっていくのだとも指摘します。
「子どもが不登校になったとき、子どもは親の思い通りにならないことを、親御さんは身にしみてわかるのです。もうこれは、子どもに任せないとしょうがない」。
すると子どもはだんだん心を開いてきて、いろいろなことを相談しながら前に進むことができるようになっていきます。
本書には、不登校の子どもを抱えた親の心情が「不登校あるある川柳」として収録されています。最後にその中から一首を。
『捨てました こうでなければ 親の見栄』
(こだわりや見栄がなくなると、子どもの良さが見えてきます)
今回は、『不登校からの進路選択(自分の歩幅で社会とつながる)』(福本早穂 著)からご説明しました。
次回は、『不登校・ひきこもりから抜け出す7つのステップ』(椎名雄一 著)からご説明します。
次回もよろしくお願いします!