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「気になりますね!通信制高校」
通信制高校の“今” ③
卒業後の進路を考える

 2021年11月1日
 

◇◇通信制高校の“今”
第3回 卒業後の進路を考える◇◇

◎通信制高校全体が抱える「危機感」
高校生の卒業後の進路は、次の表のようになっています。まずは、じっくりと見てください。



「全日制高校の卒業生は、もう57%が大学進学しているのね」
「定時制高校の卒業生は、無期雇用が38%でしっかりとした就職をしていそうだわ」
「通信制高校の卒業生は、専門学校への進学率が23%と高いのね」

―いろいろな感想が持てるのではないでしょうか。統計データですから注目するポイントや感想はいろいろと出てきます。

通信制高校各校が今取り組んでいるのが、この表の右から2番目の項目「左記以外の者」という比率の改善です。この項目に分類される卒業生は、進学、就職、職業訓練のいずれにも該当しない人のことです。「無業者」「進路未決定者」などと呼ばれています。あまり良い印象を与えない言葉ですね。

見ての通りですが、通信制高校の32%という比率は、全日制4%、定時制16%に比べると格段に高いものになっています。この結果からは、日常的な進路指導がいかに重要かうかがえそうです。
ちなみに大学進学を目指す浪人生はこの項目に分類されますが、浪人生の人数は90年代前半がピークで現在は当時に比べれば激減しています。
つまり、通信制高校各校がこの数字を改善したいと思うのは、「卒業後にこれという目標を持たずに過ごしている(過ごさざるを得ない)」卒業生を現実的に多く輩出しているという危機感にあります。

しかも卒業時の「無業者」層は、20代半ばになっても継続しているのではないかという推測データもあります。 これは、ある通信制高校が自校の卒業生を調べたもので、この学校は卒業時の「無業者」層が約10%と平均に比べればかなり低い比率で、比較的進路指導がしっかりしている学校なのですが、20代半ば時点でも「無業者」層がほぼ同率だったという結果になっています。

卒業時の10%と20代半ば時点の10%は、人としては異なるのですが、大学や専門学校卒業、あるいは一旦就職したあとでも一定の率で「無業者」層がいるものと推定されます。

◎卒業後“空白期間”のメリット
卒業時「無業者」比率改善のため、通信制高校では、キャリア教育や職業教育に力を入れる学校が目立ってきました。
これは、とてもよいことだと思いますし、学校選びの判断材料になることだと思います。

ただ、高校卒業後に一定の空白期間があるのも悪くないと思っています。案外、高校3年間で自分の将来像が見えない人も多いのではないかと思うからです。

私の経験で恐縮ですが、私が大学進学した頃は多数の浪人生がいた頃でした。私はたまたま現役で大学進学しましたが、同級生の豊富な知識や大人びた言動にずいぶんビックリしました。その人たちは、あとでみんな浪人時代があったと知りました。この時期、人は自分自身を理解することで大きく伸びるのだと思いました。

実際に高校卒業時に1年間の“空白期間”置いた人を2人ご紹介します。
一人は、中学時代にいじめを受けて不登校を経験したのですが、中学の部活には通い、そこに遊びに来た通信制高校在学中の先輩から通信制の存在を知り進学します。進学後は、周囲の生徒がアルバイトを始めたことに刺激され自らもアルバイトを始め、そこで人に頼られることや働くことの楽しさを見つけたようです。

高校卒業時は進路が定まらず、働くことを条件に1年間の空白期間を父母に提案して認められました。この1年間に、今につながる放課後等デイサービス事業所などでアルバイトをします。この1年間を通じてわかったのは、自分が幼い頃から幼児教育にたずさわりたかったことでした。
その後、資格取得のために3年制専門学校に進学し、20代半ばになった現在ではある放課後等デイサービス事業所を任されるその会社の最年少管理者にまでなっています。忙しいながらも、自分がやりたかった子どもたちの成長を見守る仕事に就き、実に活き活きと生活しています。

もう一人も不登校経験があります。通信制高校は、比較的年齢層の広い学校を選びました。高校卒業時は、大学浪人という感覚もありましたが進路を決めずに1年間の空白期間を置きます。その間に、偶然ですがドライブ中の車のトラブルをきっかけに車関連の仕事へ関心がわきます。今では車もバイクも大好きですが、それまでは車関係にまったく興味がありませんでした。

そして、選んだのが自動車整備士の道でした。当初は2級自動車整備士を志望しましたが、女性ということもありより高度な知識があったほうが有利な面があることから1級自動車整備士を目指し、結果的に4年制専門学校を卒業しこの春資格取得と陸運局就職を実現しました。

2人とも現時点の仕事につながったきっかけは偶然と言ってもいいかもしれません。ただ、その仕事の方向に舵を切ったのは自分自身です。そこには、“空白期間”が得がたい心の余裕を加味しているように思います。
1年間の“空白期間”をあえてとったのも、偶然の出会いをものにしたのも、「自分が進む方向は自分で決める(たい)」という流されない感性があったのだと思いました。

今回は、「卒業後の進路を考える」についてご説明しました。いかがだったでしょうか?

次回からは、新シリーズ「生徒数が多い、少ない!? それって通信制高校の実力?」についてご説明します。
次回シリーズもよろしくお願いします!