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「気になりますね!通信制高校」
今春新設校はこんなところが新しい⑤
新設校インタビュー③わせがく夢育高校 校長 岩澤 正明さん

 2022年3月15日
 

◇◇今春新設校はこんなところが新しい
第5回 新設校インタビュー③
わせがく夢育高校 校長 岩澤 正明さん
「わせがく高等学校の基礎を取り入れながら、地域に根差した学校へ」◇◇

2003年に開校したわせがく高等学校を運営する学校法人早稲田学園から2022年4月、新たに「わせがく夢育高等学校」が開校。約20年の間にわせがく高校が培ったノウハウと自然豊かな飯能本校、地域連携などを活用し、どのような学校を作り上げていくのか、岩澤正明校長にお聞きしました。


“わせがく高校”の基礎を取り入れた学校に

私自身は、もともと埼玉県立高校の教員をしていました。途中、8年ほど教育委員会に籍を置いていた時期があり、その後管理職として県立高校に戻り、教頭、校長を15年ほど勤めました。

私の教員生活の出だしは定時制高校でした。そして、最後の5年間勤務した飯能高校は全日制と定時制の併置校だったため、定時制・通信制の関係を当時から身近に感じていました。また飯能高校校長時代に、高等学校体育連盟の定時制通信制部長をしていたため、私学の通信制高校の先生方と交流がありました。その関係から声をかけていただいて、定年退職した2年前にわせがく高校の副校長に就任しました。

公立高校の教員時代から様々な学校関係者とコミュニケーションを取ってきたことで、通信制高校の必要性を感じていました。私が公立高校の校長だった時にも転学していく生徒がおりましたが、やはり預かった生徒は自分のところで最後まで面倒を見たいというのが、学校としての本音です。しかし、学校と合わない生徒が出てきてしまうのも現実としてありました。そうなった時に、生徒を出す学校側はそこで辞めさせてしまうのではなく、次の学校とつなげてあげることが大事になります。そのため、当然一から入学してくる生徒もそうですが、編入・転入する生徒を引き受ける場所として、通信制高校が必要だと当時から感じていました。そこで途切れたら、生徒の人生はかなり厳しい局面に立たされてしまいますから。

私自身も通信制高校に転校して生徒が変わる姿を見た経験があります。昔で言うやんちゃな子たちが通信制高校に通い、顔つきが良くなっていくことがありました。自分に合った学校に行くと人は変わっていくのだと思い、そういう意味でも通信制高校の価値を実感しました。

2022年4月に開校するわせがく夢育高校は、20年間わせがく高校が行ってきた実践を踏まえた上で学校作りをしていきます。新型コロナウイルスの影響で、オンライン化が急速に進みましたが、オンラインだけで全て賄うのは難しいと思っています。もちろん時代の流れに乗っていかなければいけない部分もありますが、わせがく高校が実践してきた、従来の通信制高校の通学型を残しながら新たなものを取り入れるのが第一だと考えています。

通学型は、通学することによって、社会に出ていくための基礎的な部分を養えます。オンラインは外に出なくても授業を受けられるのですが、元々外に出ることが苦手な子たちが多い通信制高校なので、卒業後社会に出ていくことを考えると、例え日数が少なくても外に出ることを重視した方が良いと思っています。就職した時に、オンラインだけで最後まで仕事ができるかというと、なかなか難しいのが現実です。事情は人によって違いますから、基本的に外に出て人と関わることが大事になると考えると、通学型にはその強みがあると思います。オンラインは、メールのように文字だけではないので伝わってくる情報も多いですが、それでも分からない微妙な部分というのがあります。そのため、わせがく夢育高校でも通学型を重視し、その中にオンラインを取り入れる形にしていきたいと考えています。

廃校利用と地域連携

わせがく夢育高校の本校となる場所は、自然豊かで教育資源もたくさんある埼玉県飯能市です。利用する旧東吾野小学校は134年も続いた学校のため、地域の方々には学校に対する想いがものすごくありました。飯能市としてもしっかりとした再活用先を探したいと考えていたようで、文部科学省の『「みんなの廃校」プロジェクト』に参加していたようです。そして、たまたま我が校と意見が合致したことで、本校の場所として決まりました。

文科省の『「みんなの廃校」プロジェクト』は、地域の活性や連携をうたっているため、我が校も“地域連携”をキーワードに、地域に根差した学校作りを大切にしています。校舎は84年竣工なのですが、耐震も済んでいるのでしっかりしていますし、とてもきれいな状態でした。ただ、少し前に一部台風被害にあっており、その部分の現状復帰は市から補助金を出していただきましたが、それ以外の校舎の内装や体育館の改修工事は我が校が行い、きれいで使いやすい校舎となっています。

本校として利用が決定する段階で、まず地域の方々と話し合って協定を結びました。それをさらに飯能市にも広げて、今度は市と3者での協定としました。地域連携と言ってもそこまでやっているところはなかなかないのではないかと思います。この協定は市の考えにもありまして、まずは利用するにあたって地域が受け入れてくれるかどうかが一番重要なところでした。地域としては学校が入ってくれるのは大歓迎だと最初から受入てくださったのですが、その中で連携しながらやれることを話し合い、協定を結んでいきました。協定の中には、避難所としての利用を継続することや、学校を可能な限り地域に開放することが盛り込まれています。

旧東吾野小学校には近くの中学校が廃校になった時や小学校100周年、閉校の時など、地域の方が作った記念碑がたくさんあります。学校や市が作ったのではなく、地域の方々がお金を出し合って記念碑を建てるくらい、想いのある学校なのです。思い入れがあるだけに、学校の再利用には地域の期待もあるので、それに潰されないように頑張りたいと思っています。

地域資源を授業やスクーリングに取り入れる本校でしかできない経験

わせがく夢育高校は、本校とキャンパスで生徒の指導を行っていきます。飯能本校と各キャンパスが夢育高校となります。

また、募集エリアは基本的に山梨県を入れた1都7県です。群馬や東京に近い埼玉県の子たちもおり、学生がどのあたりから来るのかまだわかりません。学習センターを広げていくかどうかはこれから先の話になると思いますが、現状としては、埼玉県を拠点として運営していきます。

また、わせがく高校で行ってきた生徒たちのメンタル面のケアは同じく行っていきます。担任にはなかなか言えない悩みを教育カウンセリングでサポートしていきます。カウンセラーが常駐し、主に教育相談の部分で生徒の悩みに対応するため、病院のカウンセリングとは違い、社会や学校においてどうやったら適応できるのかということを保護者も含めて一緒に考えていきます。誰かに気持ちを話すことが一番必要だと思いますので、言葉に出して自分の感情を表現できる場として相談に来てもらえればと思っています。

学習スタイルは、校舎によって異なります。キャンパスでは、既存のわせがく高校のスタイルを継続し、全日型(週5日制)・通学型(週2日制)・自学型(通信制)から選択できます。そして飯能本校には、新たにマイスタイル(週2日~5日)を設置。わせがく高校の通学型ではそれぞれのスタイルで分けられていた授業を、全日型の午後の授業と一緒に受けられるようにし、その後の部活なども一緒にできるようにしました。2~5日とありますけれども、最低限火・金曜日の2日間は必ず登校し、それ以外のところは出ても出なくても良いようにしています。一緒に授業を受けると一体感もあり、登校する自信にもつながって、5日間通おうとする子が増えてくるかもしれません。お互いを知れば、この子もできるのなら自分もできるのではないかという気持ちが生まれ、それがさらに発展して部活を始めたり、放課後残って勉強したりということにつながれば良いと思います。

部活は、本校の生徒と一緒に作り上げていきたいと考えています。わせがく高校にある部活だけではなく、生徒たちの興味・関心に合わせて準備していければと思っています。また、集団で行う運動部については基本的にキャンパスと合同でやることになると思います。ただ施設としては、絶対的に本校の方が有利ですから、そこに行って合同練習するようになるのかなと思います。グラウンドもとても広いです。今は、グラウンドの形的に200mのトラックしかとっていませんが、その奥に軟式野球ができるくらいのスペースは十分あります。

また、本校の金曜日の午後にある最後の授業は、特別活動を予定しています。地域密着の木育や古典芸能、郷土料理といった授業ができるように1時間組んでおり、探究の時間として地域学習を入れていきたいと思っています。特別授業では、地域の方を特別講師としてお呼びし、多世代の方との交流や会話が生徒たちを大きく育て、新たな自分を発見するきっかけとなるのではないかと考えています。

わせがく夢育高校のスクーリングは、本校で行います。キャンパスでは、わせがく高校と同じように補習授業を行い、スクーリングの時だけ飯能の本校に行くことになります。これまでは、大学などを借りていましたが、自前の施設になりますので、よりスムーズにスケジュール通りのスクーリングを進行することが可能です。

キャンパスの生徒がスクーリングに来る際は、本校の活動に近いことができればと思っています。私は、公立高校の教員生活最後の学校が飯能高校だったため、飯能については良く知っています。いろいろな教育資源がありますが、やはり豊かな自然が魅力です。飯能市の70%が森林のため林業が盛んなのですが、木ひとつだけでも色々学びができると考えています。さらに、飯能本校のすぐ近く、東吾野駅との間に原木センターがあります。ここでは木材の市が開かれたり、たくさんの木が集まってきますので、色々な勉強ができると思います。

本校では、地域資源を活用した授業を補習授業と言いつつ、探究の時間として少し地域学習を入れていきたいと思っています。それがいままでのプラスアルファの部分であり、地域の方々と交流の場になると思います。

飯能本校で増える新たな選択肢

飯能本校は、これまでのわせがく高校になかったプラスアルファの要素です。本当は自然が好きだったり、スポーツが好きな子にとっては十分活動できるフィールドとなるはずです。生徒によっては、いわゆる学校らしい学校にいきたいという子もいますから、そういう意味では新しい選択肢が増えることになります。あとは、説明会に来た子の中にもいましたが、人が多いところが苦手で、駅から学校までの人ごみも難しいという子には本校の方が向いていると思います。

既存のキャンパスがありますから、それなりの生徒数になるはずです。学校としての考え方であったり、どういう生徒募集をするのかというところをしっかり考えれば、生徒は集まってくると思います。

既存のキャンパスの中にも飯能本校のような場所がいいと移る子もいるかもしれません。家から近いから飯能に行くという子やキャンパスを考えていたけれども、飯能ができるのならそちらに通うという子も集まってくるかもしれませんね。

▼学校法人早稲田学園 わせがく夢育高等学校【スクールデータ】
・本校:埼玉県飯能市大字平戸130-2
・生徒が入学できる地域(広域制):埼玉・千葉・茨城・栃木・群馬・東京・神奈川・山梨の9エリアから入学可能

今回は、「新設校インタビュー③わせがく夢育高校 校長 岩澤 正明さん」を収録しました。新しく開校する学校の意欲が伝わったでしょうか?

次回は、「どうなるの? 通信制高校卒業後」を収録する予定です。
次回もよろしくお願いします!