【学びリンク公式SNS】
フォロー/登録よろしくお願いします!

X(旧Twitter)  Instagram  Facebook  YouTube  LINE 

「気になりますね!通信制高校」
『通信制を選んでどうだったの?』(体験談を聴く会から)①
起立性調節障害(OD)のこと

 2023年12月1日
 

◇◇『通信制を選んでどうだったの?』(体験談を聴く会から)(5回連載)
第1回 起立性調節障害(OD)のこと

今回から新シリーズ『通信制を選んでどうだったの?』(5回連載)を始めます。学びリンクの通信制高校合同相談会では、「しくみ講演」のなかで通信制高校在校生・卒業生の体験談を聴いています。
毎回、私との掛け合いで話してくれます。1年間でみると約150人が体験談を話してくれます。聞き手の善し悪しはありますが、誰もが率直に話してくれます。
ときどき、「同じような話にならないの?」とたずねられます。
いやいや、「毎回新鮮で、面白いです!」とこたえます。
そんな体験談の中から、新シリーズでは5人の体験談をピックアップし、私の解説を加えていきます。第1回は「起立性調節障害(OD)のこと」です。

第1回 起立性調節障害(OD)のこと

(体験談)
科学技術学園高校卒業生
駒澤大学経営学部2年生 AOさん


◎包み隠さずリアルを語る先生に安心感【卒業生体験談】

中学卒業後は全日制高校に進学しました。しかし、高校1年の夏頃から体調が悪くなり起立性調節障害(OD)と診断されました。

全日制高校は休める日数が決まっているのに体が動かなくて、しんどかったです。結局、身体的にも精神的にももう無理でした。でも高校中退のままだと、その先もつらくなるかもと考えていました。

そこで、私から両親に通信制高校への転入を提案しました。でも「いきなり通信制高校を選ばなくても…」「1年留年してでも、そのまま通ったほうがいいんじゃない?」など、意見が合わずにもめた時期もありました。今思い返せば、両親はすごく心配してくれていたんだとわかりますが。

ただ、高校を卒業する意向は合致していたので、両親も、最後は私の意見を尊重してくれました。そして、一緒に学びリンクの通信制高校・サポート校合同相談会に参加し、かぎこう(科学技術学園高校)と出会いました。

その時、ブースで説明してくださった先生が印象的でした。
「かぎこうには、東大に合格した生徒がいます。でも、うちではほぼ何もしていません。勉強はちゃんと自分でやらないと大学には行けないよ」と現実的な話をちゃんと隠さずに話してくださって、説明を聞いた他の高校と違うと感じました。

転入後は、週2日クラスに在籍し、イブニングクラスを利用しました。13時30分以降(現在は14時40分以降)に自分のタイミングで登校できるので、ODの私に合っていました。
だんだん週2日で安定して通えるようになり、高校2年生に進級するタイミングで週5日の通学型クラスに変更しました。

その後は少しずつ登校時間に合わせて通えるようになりました。先生方も自然な会話で気にかけてくださって、これまで嫌だった学校が行きやすいところに変化したことが大きかったと思います。また、人との関わりが増えてきて高校生活が楽しくなっていきました。

大学進学を意識し始めたのは、高校2年の夏過ぎでした。先輩たちが進路を考えている姿を見て、自分の進路のことも考えるようになりました。
転入した時は、勉強に手がつけられず明日のことしか考えられない毎日だったのが、だんだん将来について考えられる余裕がでてきたことを身に染みて感じました。

受験対策では、先生方が私の声をくんで支えてくださりました。気軽に先生方が質問に対応してくれたり、たくさんの大学の赤本をそろえてくれたりとサポートしてくださりました。そのおかげで、志望していた駒澤大学経営学部に合格しました。

◎カギは内的環境と外的環境の調整【解説】

岐阜大学教授で小児科医の加藤善一郎さんは、著書『脱・「不登校」』シリーズ(学びリンク)のなかでOD患者さんにはODがメインの病態で、その症状が改善されるだけで登校に結びつく「OD単純型」と、ODとは別のプラスアルファの要素も一緒に考えなければならない「OD複合型」とがあると指摘しています。
実は加藤さんが診ている患者さんのほとんどが「OD複合型」といいます。

加藤さんによれば、例えば保護者や学校の先生のなかには、「こだわりが強い子がODになりやすい」などと、本人の性格や特性がODの原因であるかのように誤解されている方がいます。しかし、ODは本人がもともと持った「体質」であり、この体質と本人の特性やキャラクターはまったく別物として考えていかなければならないのです。

それらを踏まえた上で、休養や薬の調整によって身体と気持ちを整える「内的環境調整」、周囲の理解や配慮を求める「外的環境調整」の両面の調整が大切になります。

体験談を話してくれたAOさんの場合は、ODの診断を受けたあと比較的早く通信制高校への進路変更を考えましたが、ODが原因で不登校状態になると「内申点が下がる」「このままでは高校に行けない」というストレスが加わりがちです。本人もそういうマイナスの気持ちが芽生えますし、さらに周囲からもそういう言葉や無言の圧力が加わりがちです。

AOさんの場合は、体調に合わせて学校生活を送れる「イブニングクラス」という転学先のしくみや、病気や進路選択に理解のある(相性の合う)先生方に出会ったことが外的環境調整になりました。
内的環境調整と外的環境調整がうまくできたことで、身体にも気持ちにも余裕ができたことで大学進学など先のことも考えられるようになったそうです。


今回は、『起立性調節障害(OD)のこと』についてご説明しました。いかがだったでしょうか?

次回は『不登校のこと』についてご説明します。