「保護者の声」東朋高等専修学校 | 卒業生保護者 山岸 ひろみさん
たくさんの良い思い出が、
息子の生きる力になっています
-入学時の状況や学校生活での出来事につて教えてください。
東朋の最大の魅力は、「そのままで良いんだよ」という雰囲気の中で学校生活が送れるところです。当時は、毎日通う場所である学校が、まずは居心地が良くなければいけないと思っていました。
息子には2つの大きな大変さがありました。一つは自閉症による感覚異常の一端としての排泄の問題。もう一つは空間認知が著しく欠如していて、前後左右上下がうまく認知できないので一人で道を歩くのが難しいことです。進路選びの際にいろいろな学校をまわりましたが、排泄の問題を話すと「本人のためにも支援学校に行かれたほうが良いんじゃないですか」というリアクションが多かったです。しかし、そんな中で東朋だけは違いました。東朋への進学にあたって、教頭先生がわざわざ手作りでシャワーを作ってくださいました。失敗しても、周囲に気づかれないように配慮して、シャワーできれいにして、いつも笑顔で「大丈夫、気にしなくていいからね」と3年間言い続けてくださったのです。そのおかげで年を追うごとに失敗の回数は減っていき、社会人となった今ではほとんど失敗がなくなっています。
先生方が根気よく、温かく成長を見守ってくださったおかげです。息子の自尊意識を大切に育ててくれた先生方の姿勢を思うと、感謝の気持ちは言葉では言い表せないほどです。
-3年間の学校生活で得られたものは何ですか?
東朋では、たくさんの体験をさせていただいたのですが、その小さな達成感の積み重ねがすごく大切だったと思います。今も卒業アルバムをめくりながら「これもあった。あれもあった」と話をするんです。校外に行って帰って来られたことも、校内の行事に参加できたことも、息子の中で楽しい思い出として残っているようです。それに、ずっと憧れを抱いていた制服を着られたのも良い思い出です。
息子自身も3年間とても安定していて、一日の出来事をよく話してくれました。いろいろなことがあっても嫌な出来事としては言わずに、「そういうこともあり」だと見ていました。そういう余裕のある見方ができるのが、否定されていない学校現場なんだろうということが伝わってきました。
その後の人生でどんなに大変なことがあっても、こうした良い思い出が助けてくれると実感しています。人に迷惑をかけたり叱られたりすることも多く、彼らにとってなかなか良い体験は少ないものですから、良い思い出というのは息子にとって生きる支えになっているんです。
※学年は取材時のものです。