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2021年10月13日
不登校生を受け入れる全日制高校 立花高校を取材(福岡県)
不登校を経験した生徒を数多く受け入れる福岡県の立花高等学校(福岡市東区)。
立花高校は全国的にも珍しく、全日制高校でありながら単位制のしくみを採用し、多様な生徒でも柔軟に対応できる教育が行われています。
学びリンクは10月4日(月)、立花高校を取材。齋藤眞人校長に校内を案内して頂いたほか、当日行われた「令和3年度後期始業式」を取材しました。
≪「ありがとう」があふれるオンライン始業式≫
始業式は、新型コロナウイルス感染症対策として、オンラインで開催され、代表生徒のみが出席し、他の生徒は自宅からの参加となりました。
「生徒代表のことば」では、二名の生徒がスピーチを披露。一学期の思い出や、二学期に頑張りたいことを、堂々と発表をしました。
また、この日は「大事なお知らせ」として生徒会執行部から全生徒に一つの提案が出されました。それは10月の1か月間を、服装自由の期間とするというもの。「よりお互いの自由を尊重し合う環境があっていいのではないか」という生徒会の発案により提示されました。この提案は、今後、生徒にアンケートを取りながら決めていくとのことです。
あいさつを行った齋藤校長は、生徒会からの服装自由化に触れつつ、「自由」と「自律」についてお話されました。
「今、頑張れている人も頑張れていない人も、人としての存在価値に何ら変わりはなく、みんなの命は等しく尊いものです。そして、人間の尊厳として何より大事なのは“自由”。自由を手に入れる戦いは、歴史上たくさん起きていますが、自由とは誰もがもともと持っているものなのです」
そして、「自由」と書かれたボードを提示した斎藤校長は、「僕は、制服が不要だとは思っていません。ですが、自由ということを生徒主体で考えていく上で、この“自由”をこう書き換えたい」とし、ボードに書かれた「自由」の文字を「自律」と書き換えました。
「学校は、先生たちが勝手に決めて勝手に動かすものではないと思っています。みんなが自分たちの学校のことを自分事として考え、行動していく。それを実践していけば、将来、選挙にも行かないような無責任な大人ではなく、社会を自分たちの手で作っていくという責任のある大人になれるはず」。
「今月は、自分で“これを着たい”と思う服を自由に着てきてください。いろいろな価値観が混在する1カ月を自分たちで体験してみて、気づいたことを話し合って、この先の学校のことを一緒に決めていきましょう」とし、「自律とは厳しいものです。その厳しさを一緒に味わいながら進んでいこう」と、生徒たちを激励しました。
最後に、生徒の伴奏に合わせて校歌が歌われ、会場は温かい拍手に包まれました。
立花高校では、学校行事の司会・進行などが生徒主導で行われます。短い時間ながらも、力強い代表のことばや発表、伴奏を披露した生徒たちへ、斎藤校長からは「本当に素敵だった」と激賞の言葉が送られました。
「出席してくれてありがとう」「発表をしてくれてありがとう」といった、感謝の言葉がたくさん聞こえた始業式。時折、カメラ越しにポーズを決めたり、ピースサインを向けるなど、笑い声が聞こえる場面も。期待と不安が入り混じる新学期も、和やかなムードでスタートが切られたようです。
≪“安心”がたくさんの校内≫
全日制・単位制高校として、不登校経験者や発達障害のある生徒など、多様な生徒を受け入れる立花学校。
齋藤眞人校長は「とにかく生徒たちに対して“オープン”でありたい」と学校運営に対する想いをお話くださいました。
職員室の中央には、両端の廊下をつなぐ一直線の通路が通っており、生徒は移動の際にも職員室を横切るかたちとなります。文字通り「風通しの良さ」が目に見える構造になっています。
また、校内を歩くと、普通、多くの学校に見られる「禁止」といった張り紙が見当たりません。生徒たちへのお願いは、「禁止」や「してはいけません」といったものではなく、同じ意味でも「~しよう」と言い換えるなど、やわらかい文言になっています。
校内の様々な場所で細やかなバリアフリーが施されているのも特徴。教室内にはアナログ時計のほか、針時計で時間認識ができない生徒のためにデジタル時計も設置。張り紙にはふりがながふられています。また、教室内の掲示物は最小限にとどめられ、授業の際は生徒が板書に集中しやすいよう、掲示物部分を手動カーテンで隠せる工夫も施されています。
各階にある広々としたフリースペースは「“なんとなく”の場所なんですよ」と斎藤校長。ぼんやり外を眺めたり、時には寝転がってリラックスする生徒もいるそうです。校舎内には随所に大きな窓があり、福岡市内の街並みを見渡せるところも。椅子やテーブルが置かれたくつろげるスペースもあり、「生徒が“一人になりたい時”や、一息つきたい時に使ってほしい場所」だと斎藤校長はお話くださいました。
様々な生徒に向けた配慮が、校内のいたるところで「どんな人でも過ごしやすい空間」を作り出しているのだと感じられました。