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2023年05月27日
OD当事者の実話「今日も明日も負け犬。」上映会
起立性調節障害(OD)の当事者である学生がメガホンを取った実話「今日も明日も負け犬。」の上映会が5月26日(金)、中野ZERO小ホール(東京・中野区)にて行われました。
物語の主人公は、中学2年生の女子生徒。
友人に恵まれ順風満帆な学校生活をおくっていましたが、ある日「起立性調節障害」の症状に悩まされるように。
遅刻や欠席が増え、周りの無理解から主人公は心も体も苦しんでしまいます。
そんな中、ある少女との出会いが主人公を変えていき…という物語。
本作はアメリカをはじめ各国の映画祭でも上映され、数多くの賞を受賞するなど大きな話題に。国内でも多くの新聞やメディアにも取り上げられ、注目を集めている作品です。
この日は開場時間前から多くの来場者が訪れ、場内はほぼ満席。多くの関心が寄せられていることがうかがえました。親子で見に来られている方も多く、幅広い年齢層がOD当事者のリアルな心情に熱心に見入っていました。
本作は、監督、脚本、役者、スタイリストやメイキングなど全てを学生たちによるチームが手掛け、コロナ禍、闘病、初対面といった様々な壁を乗り越えて実現した映画化だといいます。
本編終了後にはメイキング映像も流れ、「自分の過去と向き合うこと」や「本人が本人役を演じること」などの壁にぶつかりながらも、懸命に撮影に取り組む様子が映し出されていました。
上映終了後は大きな拍手に包まれました。
上映会を企画した団体「Kiku-Ne」の代表・野澤菊枝さんは、自身の娘二人の発症をきっかけに、ODの啓発活動を行ってきました。
上映終了後、野澤さんは来場者に向けて次のように話しました。
「娘が診断された時に主治医から言われたことは、“この病気で大切なことは、一人でも多くの理解者を得ることだ”ということです。
見た目では分からないのでなかなか理解されないことも多いのですが、娘達も私も理解ある環境に恵まれていました。
それは、学校や友達、地域の皆さんが、私が挙げた声を聞こうとしてくれたからです。一人でも多くの方が少しでも寄り添ってくれるだけで、子どもたちや保護者にとってはとても心強く思えます」
そして、メイキング映像内のエピソードにも触れ、「監督は、映画を通して“キラキラしている部分を伝えたいんじゃない”と言っていました。映画化成功したよ、回復したよ、という例を見ると、ついつい“あの子は頑張ったんだから、あなたも頑張れば大丈夫よ”などと思ってしまいがちです。彼女らが伝えたいことは、頑張れない人には頑張れない理由があるんだよ、頑張れなくても大丈夫だよというメッセージです。それを少しでも感じていただけたら」と話しました。
この日会場に訪れた女性は、自身の子どもがOD当事者であることをきっかけに上映会に足を運んだと言います。
「起きられない、吐き気、周りが理解をしてくれないなど、本当に“当事者あるある”の嵐だった」と映画の感想を話しました。
「起立性調節障害という言葉は知られていても、実態は中々広まっていないと感じる。ぜひ私たち大人世代や、教育関係者の方に広く見られてほしい」と力を込めました。
野澤さんは上映会を終えて、「映画の中で描かれていた起立性調節障害の症状は本当にたくさんある中のごく一例。発症も症状も回復も経過も感じ方も、100人いれば100通りある。私は娘たちから、100人いたら100通りの“当たり前”と“普通”があっていいんだということを教えてもらいました。今日の映画も、当事者の方もそうでない方も、感想がみなさまそれぞれ違うはず。何か一つでも、みなさまの心にお届けすることができていたら嬉しい」と話しました。