ニュースの読み方・社会の見方②
「パワハラ問題ではまず、余計なことをからませないで考える」
2018年11月2日
パワハラは社会的に許されない問題となっている(医労連のポスター)。 |
では、前回取り上げた宮川選手と塚原夫妻の件ではどうなるでしょうか。
宮川選手は、日本体操協会の塚原千恵子女子強化本部長、塚原光男副会長に呼び出されて元コーチの暴力を認めるよう求められたとしています。このとき、宮川選手は「恐怖と苦痛で全てがおかしくなってしまいそう」と大きなショックを受けたそうです。体操協会の役員は選手を育てたり、大会参加選手を選んだりするときに大きな力を持っています。未成年である一選手にとっては、ちょっと注意されるだけでも萎縮しそうですが、宮川選手は家族の対応を批判され罵倒されたといいます。これが事実ならパワハラだとなるでしょう。となると、塚原夫妻は宮川選手に謝り、納得できる対応をしなければなりません。
ハラスメントは加害者には罪の意識がない場合が多く、被害を受けた側に不利益や心の傷が残ります。ですからハラスメントをなくすためには、組織全体としてそれを許さない環境を作ることが大事です。個人情報を守りながら相談に乗るカウンセリングルームやハラスメントを訴えることができる委員会を設けるなどの対応策が必要です。ニュースを読むときには、自分のまわりではどうかを考え、犠牲者を出さない社会にするにはどうしたらいいか、まで考えたいものです。
また、宮川選手は、パワハラをしたのは「宮川選手を塚原強化本部長が指導しているクラブに引き抜きたかったから」だと言っています。これはパワハラの理由を類推したものだと思いますが、テレビなどでは、それが本当かどうか、社会的に問題かどうかについても、パワハラ問題と一緒に議論しているので、パワハラ問題がかすんで見えました。もし行きすぎた引き抜き行為があって、それが許されないことであれば体操界全体の問題として取り組む必要があります。別の二つの問題として分けて議論し、整理してから二つの問題の関係性を冷静に考えるべきでしょう。
テレビではインパクトのある面白い話題を大きく取り上げがちです。私たちはそれに惑わされることなく、問題の本質を見極める力をつけたいものです。