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椎名雄一先生コラム『不登校に効く心理学の話』28
矛盾した我が子の言葉に振り回される

 2023年7月3日

 


カウンセリング室の椎名雄一です。
日々皆さんとメッセージのやりとりをさせていただいたり、カウンセリングをする中で気づいたことや傾向などをこのコーナーでお伝えしています。

「やるやる詐欺」「行く行く詐欺」

保護者とお話をしているとよく聞く言葉です。「これからやるよ!」と言ったけれどやらない。「明日から学校に行くよ」と言ったけれど行かないといった「やっぱりやらない!期待して損した」というような場面を指している言葉です。

中には「雨だから行こうと思ったけれどいかないことにした」「親が悪いからいけなくなった」 「行っても意味がないからやめる」「通信制に行くくらいなら塾に行った方が良い(塾に行くわけではないのに)」「大学には行く(今何もしないのに)」・・・

このようにもはや何を言っているのかわからないくらいの矛盾に悩まされることもありますね。

このような矛盾した我が子の言葉に振り回されると「勉強したい」「わかった!学校を選んできたよ」「これが食べたい」「わかったこれを作ったよ」と振り回された結果「やっぱりいらない」を繰り返すようになります。労力が無駄になるくらいならば良いですが、お金や保護者の人間関係の信用を失うこともあります。疲れて「もう知らない!」と言いたくなる気持ちを抑えている方も少なくないのではないでしょうか?

このような場面では気をつけたいことが3つあります。

1つ目は「本体はそのセリフではない」ということです。

「勉強したい」(今、自分は何もしていなくて不安だから)
「これが食べたい」(今日は不安が強くて、気持ちを切り替えたいから)

のように背後にある「不安」(だけではないですが)のような「気持ちを訴えている」と理解するとお子さんの動きを捉えやすくなります。

夫婦の会話でお母さんが「今夜何食べようか?」とお父さんに質問した時には「カレー」でも「餃子」でも正解ではないことがあります。「ひとりで料理を作るのが疲れた」的なことを伝えたい時に「今夜何食べようか?」という問いが発せられたりします。「今日は一緒にやろうか?」「気になっていた店で外食しよう」が正解かもしれません。「カレー」か「餃子」で迷っていると「何を言っても不正解」と感じるかもしれませんね。

セリフの背後にある気持ちを察するようにすると表面的な言葉に振り回されることが減ります。

2つ目は「物差しがおかしいかもしれない」と疑ってみる。

分相応という言葉がありますが、特にお金や機会に関しては「できること」と「できないこと」 があります。親にとっての1万円と10万円は全く違いますが、お子さんはその価値の違いがあまり理解できていません。1億円と言えば流石にあり得ないとお子さんもわかるかもしれませんが10万円くらいは何とかなるのではないか?と考えがちです。お金に限ったことだけでなく、依存の仕方、ドタキャンの安易さなども同じようなことが言えます。「3万円欲しい」のような話になった時に「1万円もありだったからありだろう」という雰囲気を出さずに「1億円くれ!」って冗談ですか?というような雰囲気で答えることもできます。

子どもは親の顔を見て、ことの深刻さを測りますから「ここから先は愛情云々ではなく、不可能な領域」を明確に示しておくことは大事です。(何歳になったら親としてのサポートを終了して、親は親の人生をやると宣言しておくのも大事ですね)

物差しを知るという意味ではアルバイトは有効です。家族以外の人から基準をたくさん教わって、あまりいつだつした要求、欲求に振り回されなくなります。

3つ目は「コミュニケーション」です。
大人でも「別荘が欲しいな」「海外旅行に行きたいな」「高級車が欲しいな」と思うことはあります。その時点で購入が難しくても家族で「欲しいね!」と共感し合うことはできます。場合によってはみんなで協力してお金を貯めようとなることもあるかもしれません。お子さんが高価なものを欲しがった場合に「それが欲しい」ということ自体は否定せずに共感して良いと思います。そして、一緒にそれを手に入れる方法を工夫するという立場を取ればコミュニケーションが成立します。あくまでも理解者、味方として実現に向けて一緒に(親だけでなく)頑張ろうとなるとその欲求は成長につながる良い欲求に昇華される可能性もあります。

最近では数十万円のものを欲しがって暴れるというような事例が増えていますが、実際に無理なお金を渡し始めるとエスカレートしてしまいます。コミュニケーションを間に挟むようにするとそれを予防できます。

「矛盾した我が子の言葉に振り回される」について書かせていただきました。他のケースがないわけではありませんが参考にしていただけると幸いです。