特集記事
2018年12月06日
「食」から見える家庭環境(4/4)>『養護教諭「食育」調査』
A先生の話(高校)
母子関係が悪化し、母親からは「何もかも自分でやっていきなさい。食事も自分で作りなさい」と言われた。夕食は冷蔵庫の余りものやカップ麺などで 過ごしていたが、最近はそれもなくなっている。お弁当は、ほかの兄弟の分は作られているが自分のものは用意されていない。学校のお昼は保健室に食パンを持ってくるだけ。話を聞くと、幼少の頃から両親の仲が悪く、その間を取り持つ役割を担っていた。そのストレスが爆発してしまい、反抗的になったのがきっかけ。
これが中学生までの話なら、ネグレクトを懸念し、アプローチもかけられるかもしれないが、高校生ともなるとある程度大人。親のほうにも言い分があるはず。すると養護教諭がどこまで間に入って良いか判断が難しい。
B先生の話(高校)
子どもにはお金を渡すだけで、何を食べているか把握していない保護者がいる。家族と一緒に食べることも少ないが、親世代の朝食欠食や中食が子どもに伝播している。料理が苦手な母親の場合、お弁当を作っていても白米とおかず1品(コロッケや唐揚げなどスーパーの総菜)だけ。家庭で作った場合でも、そうめんやパスタなどの1品料理のみが増え、白米とおかずといった食事は減ってきている。
6つの「こ」食(孤食・個食・固食・小食・粉食・濃食)に新たに「子食」も加わった。これは保護者、家庭の意識の問題だと思う。
C先生の話(高校)
家庭関係が複雑で食事を作ってもらえない生徒がいる。覇気がなく学校も休みがちであり、過敏性腸症候群の疑いで体調も崩しやすくなってしまった。また、家庭内別居で悩みを抱え、円形脱毛症も引き起こしている。
こういった問題に対して、なかなか家庭の状況を把握するのが難しい。外部の専門機関と連携した取り組みが必要だと感じる。
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子どもたちの「食」に注目することで様々な課題が見えてきました。体調不良や集中力の低下、無気力などから不登校になるケースも多く、「食」を通してその子の困り感がわかれば、新たなアプローチが見つかるかもしれません。
2005年より「栄養教諭」制度が始まっており、国は学校における食育の推進にも取り組んでいます。しかし、今回アンケートをとった養護教諭が務める学校では栄養教諭の配置が少なく(有効回答12名中8名が「いない」と回答)、また、食育について学ぶ機会がないなど、学校現場において食に対するアプローチはまだ十分とは言えない状況です。
養護教諭「食育」調査
集計:学びリンク総合研究所
期間:2018年9月26日~10月21日
回答数:養護教諭14名
※Q6、7の有効回答は10名
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