学びリンクで働く!元不登校・通信制高校卒業生のつぶやき
4:自分なりの踏ん切りのつけ方
2023年3月1日
学びリンク編集部で働いている、元不登校・通信制高校卒業生の柳野です。
このコラムでは、そんな私が通信制高校の専門出版社である「学びリンク」で働きながら感じたことを紹介します。
3月に入り、卒業式シーズン到来です…。
私が不登校だった中学3年生の今頃は、「高校は通信制に行くことがようやく決まったのに、今度は卒業式か…」と、どうするか迷っていました。
親も学校の先生も「卒業式、どうするの?」とさぐりを入れてきました。そして、卒業式に出て、みんなの前で卒業証書をもらう選択肢の他に、校長室で卒業証書をもらう選択肢を用意してくれました。
すると、担任の先生から「卒業式の予行練習の様子を控室から見てみない?」と誘われ、その日は、保健室登校をしたことを覚えています。
私がまだ学校に通っていた中学1年生の時より、みんな身長が伸びて、どこかたくましく見えました。そして、合唱発表の時、私がいた体育館の端の控室まで声が響き渡り、自然と涙が流れました。力強い歌声にいろんな思いがこみ上げてきて、ほんの少し「一緒に歌いたかったな」と思った自分がいました。休憩時間に、今も変わらずかけがえのない心友が声をかけに来てくれて、「泣いてたでしょう(笑)」と笑わせてくれて、やっぱり卒業式に出ようと思いました。
卒業式当日。保健室から待機列に向かうと、「久しぶり」「元気だった?」と声をかけてくれる友達もいて、入場から卒業証書授与のところまで乗り切れました。授与が終わって、舞台から降りたら、みんなは保護者席の前を通って席に戻るところを、私はそのまま出口へ向いました。
外に出た瞬間、春風が気持ちよくて、どこか晴れやかな気分でした。
最近、当時の卒業式を振り返る出来事がありました。
種蒔夫監督のドキュメンタリー映画「自立への道 不登校が呼び覚ますもの」をYouTube配信で見た時のことでした。
大人になった元不登校8人が当時を振り返る映画で、一人の女性が、卒業式に出たことを、こう振り返っていました。
学校に行けていなかった時期に、本をどうしても買いたくて外へ買い物に出たら、同級生の男の子と会って、でも平気だったんです。「逃げ隠れするようなことじゃないのだな。私は、私の意志で学校に行かなかっただけなんだ」ということに気づいて…。「行っているのがえらいのではなくて、行っていないのが恥ずかしいのではなくて、私は行かなかっただけなんだ」ということに気づいた時に、卒業式に出られると思ったのです。その自分を試したかったのだと思います。卒業式に出ることで、自分がもう平気なのかどうか…。
その言葉を聞いて、「私もそうだった」と気づかされました。
「私は地元の中学に通うより、バスと電車を乗り継いででも適応指導教室に通うことを選んだのだ。そして、中学卒業後は通信制高校に通うのだ。私はちゃんと、私の道を歩いているのだから、今もこれからも恥ずかしくない」と自分自身のためにも証明したくて、卒業式に出たのだろうなと振り返りました。
そして、4月になり、通信制高校の入学式を迎えました。みんなが舞台の上で、それぞれ抱負を発表しました。
「高校では、毎日学校に通いたいです」
「朝早く、起きます」
「高校生活を楽しみたいです」
人前で緊張しているにも関わらず、一人ひとりの抱負を聞く度に、「ここなら安心して学校生活を送れそう」とどこかほっとする自分がいました。
学校に行くことで安心できる学校ってあるんだなと実感した、通信制高校生の初日でした。