椎名雄一先生コラム『不登校に効く心理学の話』②
親の気持ちが安定するとうまくいく3つの理由
2022年5月2日
日々皆さんとメッセージのやりとりをさせていただいたり、カウンセリングをする中で気づいたことや傾向などをこのコーナーでお伝えしています。今日は「親の気持ちが安定することが大事」という話です。
4月はお子さんにとっても保護者にとってもなんだか「テスト」のような感じがする時期です。
これまでつみあげた登校への準備がうまくいくのか?
毎日学校に通えるようになるのか?
そんなふうに一喜一憂している方が多かったのではないでしょうか?
私のところにも「明日は入学式です」「初日は登校できました」という喜びのメッセージがたくさん届きました。その一方で「やっぱり起きてきません」「2日目からいけなくなりました」という苦しそうなメッセージもたくさん頂きました。
メッセージなので声は聞けませんがぐったりとされている保護者の顔が浮かぶようなメッセージもたくさんありました。本当につらい時期だなと感じます。
そんなやり取りの中で「こうしたらうまく行った」というケースを3つご紹介します。
1つ目は「行けなかった日の対応」についてです。
初日は学校に行けて、2日目は学校にいけなかったというような時に「ひどく叱る」「強引に起こしていかせようとする」としたご家庭はそれ以降の登校が全滅となっていることが多く、逆に「昨日、頑張ったものね!」とそのペースを受け入れて(もちろん嫌味など混ぜずに)関われていたご家庭では1日おきかもしれませんが、徐々に登校できるようになっています。
中には「学校に行けない」と決まった時点で1日の予定を日曜日のようなスケジュールに切り替えて、全力で遊んできた親子もいます。お子さんからしてみたら「ここまでされたら『実は学校に行ってほしいと思っているんでしょ』とは思えない。家族は味方でいてくれるんだ。学校に行かないで遊んでいることを私の方が気にしているくらいだった」と心の底から充電ができて、3日目の登校につながったというケースもありました。
1週間5日のうちで1日も通えない状態だったら1週間に1日通えたら前進です。
途中でお休みをしてしまったとしても次の登校につながるような応援ができるゆとりを持てるようにしたいですね。
2つ目は「夫婦の姿」です。
どのご家庭にも事情があり、ご夫婦や祖父母との関係などがよくない場合もあります。親が喧嘩をしているご家庭や愚痴や不満を普段から口にしているご家庭はお子さんの気持ちが落ちやすい傾向にあります。「マイナスの気持ちをもらってしまった」そう口にするお子さんは少なくありません。せっかく気持ちを上げようとしていても耳に入ってくるのが喧嘩や愚痴では気持ちがなかなか上がりません。
あるご家庭ではお母さんが忙しい日にお父さんが普段よりもいろいろな家事を夜中にやっておいてくれたそうで、朝起きてそれに気づいたお母さんが「ありがとう」とお父さんに声をかけました。そのやりとりを聞いていたのか、お子さんにスイッチが入って動き出したというケースもあります。私も不登校・ひきこもりの時期は家の中の声や雰囲気をずっと聞いていた気がします。ケンカの声を聞けば消えてしまいたいくらい苦しくなっていたことを思い出しました。
3つ目は「反省よりアップデート」です。
不登校が始まると親がショックを受け、自信をなくしてしまいがちです。反省をしすぎて、落ち込みすぎると将来が見えなくなり、家の雰囲気も暗くなってしまいます。しかし、これまでのやり方が良くなかったと反省する必要はありません。むしろ、これまでできる限りの最善を尽くしてこられたのだと思います。
ただ、近年、社会の様子が大きく変化しています。遊び方も把握するのが無理なほど種類が増え、子どもたちから「共通の話題」がなくなりました。働き方や勉強の仕方も大きく変わっています。その社会の変化と今までのやり方にズレが出てきているのかもしれません。そういう意味では反省ではなくアップデートは必要です。
「そっか!知らなかったな!」と新しい考え方、新しい文化をどんどん吸収してアップデートしていく姿の方が反省して暗くなっている姿よりもお子さんの力になります。「通信制高校」を選択肢に入れてみることもアップデートのひとつです。最近では通信制高校を第一志望にする生徒がいるくらいでその中身は充実しています。自信を持って、今までのやり方を修正・アップデートしてください。その方がうまく行っているご家庭がとても多いです。
ぜひ参考にしてみてください!