椎名雄一先生コラム『不登校に効く心理学の話』③
「『・・したのに!!』と言わないようにしたい」
2022年5月16日
日々皆さんとメッセージのやりとりをさせていただいたり、カウンセリングをする中で気づいたことや傾向などをこのコーナーでお伝えしています。
今日は「『・・したのに!!』と言わないようにしたい」という話です。
「こんなに心配しているのに」
「こんなに準備したのに」
「こっちは朝早くから頑張っているのに」
そんな気持ちがムクムクと湧き上がってくることはありませんか?親も人間ですから仕事を切り詰めて、やりたいことを我慢して、言いたいことも飲み込んで我慢していれば当然、「・・・したのに!」という気持ちになります。そして気づけばお子さんの幸せや笑顔を求めていたはずなのにイライラして落ち込ませてしまっているかも知れません。
「喜捨(きしゃ)」という言葉があります。
例えば、食料が足りないときに少ない食べ物を自分が我慢して分け与える。分けてもらった人はそれを粗末に扱って、腐らせたり、捨ててしまう。そんなことをされたら「せっかく、我慢して食料をあげたのに!」となってしまうかもそれません。それはそうです。自分の身を削って、食料を与えたのですから大事にしてもらわなければ困りますね。
いつしか「相手のことを思う気持ち」よりも「私はお腹が空いているのを我慢した」という気持ちでいっぱいになって、イライラしてしまいます。冒頭の「こんなに心配しているのに」「こんなに準備したのに」という親子のやりとりに似ています。
一方で有り余るほどの食糧があって、どうやっても食べきれない。そんなときには気分も違います。放っておいても捨てることになる食料をどうか活用してください。そんな気持ちで人と関わることを「喜捨(きしゃ)」と言います。これならばその食糧は「余剰」なので「こんなに頑張ったのに」と必死にならずにすみます。
「子どもが悩んでいるのだから我慢しなくてはいけない」
と自分の楽しみも我慢している保護者がたくさんいます。そうすると幸福度はどんどん下がっていきます。50%しかない幸福度を30%に減らして、不登校と向き合ったら、、、それを生かさないお子さんにイライラすることでしょう!
「私だってつらい状況で頑張って、我慢しているのになんで約束通り動かないの?」
そうなります。
そんな時には親の幸福度を先にあげることがコツです。
120%の幸福になってから20%を分けている分にはそこまで必死にならずに済みます。余剰分で対応しているからです。
そして親が人生を楽しんでいると「お母さんばかりずるい」「お父さんはやりたい放題」とお子さんがいうかも知れません。それこそ「幸せになりたい」の入口です。「人生は我慢」「人生は苦痛」そんな姿を親が見せてイライラしていては「だったら生きていたくない」と言わせてしまいます。
親が韓国に聖地巡礼ツアーに行ったらお子さんが回復した。お父さんがドローンに夢中になったらお子さんが回復した。そういう事例はたくさんあります。
「お子さんこそが生き甲斐」
「お子さんをいじりすぎ」
「先回りしてフォローしすぎ」
これは百害あって一利なしです。
ある高校生が「私はあなたのおもちゃではない」と親に感じると先週話をしてくれました。
どういうことなのか聞いてみるとその子のお母さんは趣味もなく、仕事にも熱中しているわけでもなく、高校生である自分をペットのようにいじくり回すのが生き甲斐なんだと言います。まるで赤ちゃんのように高校生の自分を扱う。他の子は「自分が思ったこと」をやればいいけれど私の場合には「自分が思ったこと」と「お母さんがやってほしいこと」の折り合いがつくことしかできない。「恋愛や仕事にも口を出して参加してきそうで怖い」と言っていました。
それよりも「人生は楽しい」ということを親がやってみせることがお子さんの未来を明るく照らします。ぜひ、自分自身の幸せを(お子さんと関連づけないで)見つけてみてください。
カウンセリング室ではオンラインカウンセリングをお受けしています。
6月に入ると「通信制高校の合同相談会」が各地で開催され、相談数が一気に増えることが予想されます。
ぜひ、余裕がある5月のうちにご相談ください。
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混乱したまま突き進むよりも1つずつ着実に進めていった方が出口がすぐに見えてきます。