椎名雄一先生コラム『不登校に効く心理学の話』16
クリスマスにはピンチとチャンスがやってくる
2022年12月2日
日々皆さんとメッセージのやりとりをさせていただいたり、カウンセリングをする中で気づいたことや傾向などをこのコーナーでお伝えしています。
クリスマスは悩んでいる中高生の保護者にとってはチャンスでもあり、ピンチでもあります。
この時期の親子の関わり方には2つのコツがあります。今回はそのコツについてお伝えしたいと思います。
まずはクリスマスは悩んでいる人にとっては最悪な時期であること。
街のイルミネーションがキラキラ輝いて、楽しそうなニュース、盛り上がっているニュースが連続するこの時期は「外に出て人と関わって楽しむのが大前提」といった空気が流れます。外出が難しい子や友だちが作れない子、好きなことが見つからない子にとっては手が届かないキラキラしたものばかりに見えるかもしれません。
普段は近づかなければすんだパーティのような雰囲気が街全体に広がって、迫ってきて、自分自身の影がより一層黒く深くなるようなそんな感じです。
お子さんを輪に入れることを忘れて、家族が盛り上がってしまったりするとそんなパーティが家の中まで攻めてきたような感じすらするかもしれません。クリスマスは参加している人にとっては楽しいイベントですが、参加できていないと感じる人にとっては残酷なイベントでもあります。
1つ目のコツは「参加」できるような雰囲気を作ること。
自分とは無関係に楽しんでいる人たちの空気を感じるのは辛いですが、ちゃんと輪に入れてもらえれば辛くはありません。
クリスマスのケーキを選んでもらうとか飾り付けをしてもらうとか楽しい雰囲気で「自分も今年のクリスマスを満喫している」と感じられるような促しがあれば、クリスマスのピンチは逆にチャンスになります。
最近では「欲しいものはないの?」と聞いても「特にない」「自分に投資しないで欲しい苦しくなるから」という中高生も多くいます。そんな中でもクリスマスは「プレゼントをもらえる」という流れがあるので希望を言いやすい時期です。
「世界中の子供がこの時期はプレゼントをもらえるのだからそれは良いことにしよう」と納得しやすいからです。
そして「プレゼント」を考えることは「未来を考えること」であり「自分自身の気持ちを想像すること」でもあります。
そのプレゼントをもらったらどうなるだろうか?
何をしようかな?
どんな気持ちになるかな?
それには人生を変えるほどのパワーは無いかもしれませんが、未来に少しだけ明るい光が差す発想であることには変わりありません。
もし、「何がいいかな?」という会話ができそうでしたら夢のような話をしてみるのも良いと思います。「これを買ったらこうなるかな!?」それは宝くじが当たったら何をしようかと夢を膨らませる姿に似ています。そんな会話をするだけでも頭の中で友だちの顔が浮かぶかもしれませんし、元気な自分の姿を想像するかも知れません。
最後に大事なことですが、その内容を保護者が先回りして「これが良いに違いない」「こっちの方がこうなるからいいよ」と言って台無しにしてしまわないことです。
「青いのとかいいよね」と本人が言っていないのに保護者が言えば、「プレゼントは青いもの限定で」となってしまいます。中には聴覚過敏で悩んでいて、家の中でも声が気になってしまうことをずっと言えずにクリスマスプレゼントのタイミングで「ノイズキャンセル機能がついたヘッドホンが欲しい」と言える子もいます。逆にそういう必須なアイテムですら言い出せないのは普段から先回りをしてちゃんと気持ちを聞けていないからかも知れません。
クリスマスはお子さんに小さな未来の光をプレゼントする絶好の機会です。
ぜひ、5分でも30分でも「こうなったらいいな」という空想ができたら良いなと思います。