椎名雄一先生コラム『不登校に効く心理学の話』22
「自己肯定感を高める本当の意味」
2023年3月15日
日々皆さんとメッセージのやりとりをさせていただいたり、カウンセリングをする中で気づいたことや傾向などをこのコーナーでお伝えしています。
「自己肯定感を高めるには?」というご質問をよくいただきます。「褒めた方が良い?」「自己 肯定感を高めるような関わり方は?」「自信がつくようなリアクションの仕方は?」のようにみなさんが試行錯誤をして、お子さんの自己肯定感を高めようとされているのがわかります。
自己啓発の本や子育て、心理の本にも自己肯定感について書かれているものは少なくありませんね。その多くが「認めてあげる」「褒める」といったものです。
多くの方が入口のところでズレてしまっているなと感じるのは多くの自己肯定感のノウハウは「他者による肯定」「承認欲求を満たすこと」を指していることです。
「褒められる」「認められる」ということで承認欲求が満たされるのは理解できます。その行為によって、自分の中身は育つのでしょうか?レベル1の中身に対して、褒め続けてもレベル1のままではないかと心配になります。それでも承認欲求を満たしたいから「親に暴言を吐く」「SNSで問題行動をする」という方向に行く中高生もいます。
「自己肯定感」はその言葉が示す通りで「自己」の話です。「他者」や「関わり」ではありません。優しい表現をすれば「自分が自分を認めている感じ」「自分が好きかどうか」です。
自分自身を輝かせようと勉強をしたり、筋トレをして「好きな自分」に近づけば自己肯定感は高まります。それは他者に認められても認められなくても(承認欲求は満たせなくても)高まります。
自分自身の性格を愛し「優しい自分が好き」「おっちょこちょいな自分がいいと思う」と思えたり、欠点であっても「自分らしい」と受け入れられると(誰にも気づかれなくても)自己肯定感が上がります。
自分自身の人生やルーツを知り、「日本人でよかった」「この一族で良かった」のように感じても自己肯定感が上がります。 お風呂で丁寧に頭から足の指の先まで自分自身を大事にして洗えばそれだけでも「自分を大事にした」と感じて自己肯定感が上がります。
不登校の中高生が散歩をしたり、部屋を突然片付けたり、誰かを助ける言動をしたりすることが あります。それらの動機をあとで聞いてみると「自分を少しだけ好きになれそうだと思ったから」と教えてくれます。「自分を少しだけ好きになれそうな感じ」の積み重ねの先に「自己肯定感 が高い」があるように思います。自分自身が自分を大事にするからこそ、自分の存在が大事になり、価値を感じるようになり、自己肯定感が高まる。そんな流れです。
人はあるものを大事に大事に毎日磨き続けるとそれが「かけがえのないもの」になります。人生において、真っ先に磨かなくてはいけないのは「自分自身」です。磨くというのはスキルアップ的な意味ではなく、ただただ大事にすることです。
自分自身を自分が一番大事にしている。ある意味で当然のことができていない人が非常に多いです。自分の健康を害することをし、自分をカッコ悪くすることをし、自分が忌み嫌う言動すらしてしまっては自己肯定感は上がりません。自分自身の身体を大事にして、心を大事にして、より素敵 な自分に育てていく。自分自身を操縦する特等席に座って、自分自身を大事にする。育てていった先に「自己肯定感が高い」状況があるように僕は思います。
最近ではその操縦席に座っていない中高生が多いように感じます。操縦席には親が座っています。まるで自分のゲームのキャラクターを他人が操作して、好きに育ててしまって、もう自分のキャラクターのような気がしない。そんな場面に似ているなと感じることもあります。
自己肯定感を高めるには「自分が自分を愛すること」がスタートです。
「褒める」でも「認める」でもない、コミュニケーション以前の「自分」を大事にする気持ちをお子さんにたくさん味わって欲しいなと思います。承認欲求はエスカレートするだけですし、レベルが上がらないので次第に理不尽な要求をするようになってしまいます。
2023年度は多くの中高生が、、、そして保護者や教師が、、、承認欲求に振り回されるのではなく、自分自身を大事にできる年であるといいなと思います。