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椎名雄一先生コラム『不登校に効く心理学の話』23
道徳の授業と多様性

 2023年4月3日

 


カウンセリング室の椎名雄一です。
日々皆さんとメッセージのやりとりをさせていただいたり、カウンセリングをする中で気づいたことや傾向などをこのコーナーでお伝えしています。

「道徳」の授業で自由に発言していいと。という一方で先生には何かしらの答えがあって、それに当てはまる答えを大事にして、それに当てはまらない答えを排除して、結論として先生の伝えるべき道徳にまとめる。という場面がよくあると聞きます。

私たち昭和の親世代は3Dで描かれた綺麗な絵を今風の絵だといい、ドットで描かれたドラゴンクエストIのような絵を昔の絵だと言います。ボカロの歌を最近の歌といい、懐かしのJpopや演歌などを昔の歌と言ったりするかもしれません。

イラストの変化や流行の曲の変化を理解しつつ「私たちの世代」「最近のもの」のように順番、 序列をつけて認識している人が多いようです。

一方で中高生にこれらの概念を聞くとどちらが古くてどちらが新しいとか、どちらが若者側でどちらが親側かという捉え方ではなく「それぞれが独特な表現方法」というニュアンスで捉えています。多様性というのはたくさんの選択肢があって、「こっち側」と「あっち側」のような壁がある概念ではないからです。

「道徳」の話に戻ると 先生は「ひとつの結論を出さなくてはならない」という枠組みの中で子どもたちの発言を聞いているように思います。似ている意見、正反対の意見、特殊な意見、個人的な意見、、、それぞれが見ている世界を自由に出して、それをひとつにまとめたり、どれかが正しくてどれかは間違っているとするのではなく、ただただ、全部がそこにあるかのような受け止め方をする中高生が多いように感じます。

「私はこうだけれど、○○さんはこうなんだね!」
という感覚です。

そんな中で「出席しなくてはいけない」「合格しなくてはいけない」とそれしか道がないような圧力は息苦しいし、怖いのではないかと思います。実際には生き方は無限にあります。自分の得意から人生を始めてもいいし、流れに乗って人生を始めるのも良い。ゴールを明確に決めても良いし、その日暮らしの中から縁を大事にするのも良い。人助けから始めても良いし、自分が人気者になることから始めることもできる。それを「学校しかない」と枠にはめて、答えはそこにしかないんだと誘導してしまう大人がたくさんいます。それはまさに冒頭の「道徳」の授業のようです。自由にどうぞ!といいながら、自分が想像できないやり方は認めず、こちらが用意していた答えに誘導しようとする。

その誘導を見破った子どもたちはその枠組みから出ようとするけれども自分で代わりのアイディアを見つけることが難しいから「学校ではないと思う」という発想しか出てこない。これが不登校の一つの側面のように思います。

「学校ではなく、、、、(  )で生きていきます!」

この(  )に入る言葉を大人も手伝って見つけられたらその子はその子らしい人生をスタートすることができそうです。そのためには大人が「道徳の正解」を手放すことから始める必要があります。

2023年度は
子どもたちが与えられた答えを超えた「何か」にたどりつく1年になったら素敵だなと思います。