椎名雄一先生コラム『不登校に効く心理学の話』25
自傷行為を止めるとマグマが溜まる
2023年5月15日
日々皆さんとメッセージのやりとりをさせていただいたり、カウンセリングをする中で気づいたことや傾向などをこのコーナーでお伝えしています。
我が子が自傷行為をするのでやめさせる方法はないでしょうか?
リストカット、抜毛、OD、根性焼きなどさまざまな方法で自分自身に傷をつける中高生がいます。最近では耳にしない日はないくらいよく聞きます。
我が子が血だらけになっている姿を見ると「やめて!」と叫びたくなる気持ちはとてもわかります。僕自身も手をナイフで刺したことがありますが、やらないで済むならばそういうことはしない で済ませたい。「やらない方がいい」ということは親だけでなく、本人もよくわかっています。
大事なことは「やらざるを得ない気持ち」になってしまうことです。
例えば「自分には存在する価値がない」という気持ちがたびたび頭をよぎる。
それと向き合うのはつらいものです。真剣に向き合ったら頭がおかしくなってしまいます。だからといって「そんなことないのに」と否定する人がいますが、気持ちはロジックではないのでそれ ではとまりません。「その気持ちが出てきてしまう」ということまでは現実に起きているからです。バンジージャンプ直前に「恐怖」が出てきてしまっている人に「そんなことないのに」と言っても出てきてしまっている恐怖が消えないのと似ています。
出てきてしまった気持ちは放置しておくと頭の中で心の中でどんどん大きくなってしまいます。
「存在価値がない」と思ってしまったらそれに該当する過去の出来事や憶測、妄想が頭の中いっぱいになります。
そうならないようにするために子どもたちの多くはまず「ゲーム」などをします。気持ちを紛らわせることができるからです。それでもうまくいかないと自傷行為が選択肢に入り始めます。恐ろしい気持ちがマグマのように湧き出してくるのをどうやって止めたら良いか?大人ならばアルコー ルに走って、酒に溺れるという状態になるのかもしれません。(これも緩やかに自分を傷つけて自傷行為をしているともいえます)子どもには選択肢が少ないですし、多くの大人は吹き出してくるマグマの対処方法を教えずに「ゲーム」や「自傷行為」といった本人がようやく見つけた下対処方法を取り上げようとします。
それはまさに
あなたは手ぶらで吹き出してくるマグマと戦いなさい
と言っているかのようです。
もし、つらさを聞いてあげることができたら?
もし、つらさを分かち合うことができたら?
もし、つらさからそっと安全なところに連れ出してあげられたら、、、
そんなにありがたいことはありません。
良好な人間関係やコミュニケーションは自傷行為の代わりになります。自分自身のつらさを「そんなことないよ」と否定するのではなく、ちゃんと理解してくれる人と関わることで自傷行為の頻度が減ることもあります。コミュニケーションの量と質が向上するにつれて、自傷行為が減っていくことはよくあります。
自傷行為の向こう側にある吹き出すマグマのような思いを一緒に受け止めてくれたら、自傷行為は存在意義を失い、やがて消えてしまいます。逆に味方をしてくれている「ゲーム」や「自傷行為」を取り上げて、余計に苦しめられたら、、、マグマは余計に吹き出してしまうかもしれません。
お子さんの問題行動の向こう側に目を向けて、本当の敵を見極めることで明るい未来が見えてきます。大変ですが、応援していますので、ぜひ挑戦してみてください。