学びリンクで働く!元不登校・通信制高校卒業生のつぶやき
14:不登校「約30万人」に思うこと
こんにちは。
学びリンク編集部で働いている、元不登校・通信制高校卒業生の柳野です。
このコラムでは、そんな私が通信制高校の専門出版社である「学びリンク」で働きながら感じたことを紹介します。
10月4日、文部科学省が2022年度の不登校児童生徒数を発表しました。小中学生合わせて、29万9049人。前年度の24万4940人から22・1%の大幅増となりました。
私は、コラム第1回(2023年1月16日):不登校「389万人」に、私がほっとする理由でこれまでの不登校児童生徒数に対して、「『同じ不登校という境遇を経験した仲間がこんなにもいる』という一つの指標となり、私をとても心強くさせるのです」と言いました。
しかし、2022年度の調査結果を知った私は、そうは感じませんでした。私が不登校だった当時から10年が経つのに、今も不登校の子どもたちが増え続けている。到底、ポジティブに捉えることはできません。
私が今、通信制コンシェルジュとして話を伺う子どもたちとは、ちょうど10歳ほど年齢差があります。今の子どもたちの状況と、不登校だった頃の自分が重なることが多々あります。これまでは、それに対して、“あぁ、つらい” と共感したり、“一緒だ”とほっとしたりする自分がいました。でも、今回改めて考えると、私が不登校だった当時と変わっていない悲しい現実だと気づかされました。
これまで20年間、不登校のお子さんをもつ親御さんをサポートしてきた親子支援ネットワーク♪あんだんて♪が、新刊『みんないろいろありました 不登校あるある』(学びリンク発行)の出版時の取材で、こんなお話をしていました。
実は、タイトルの“あるある”に、初めは抵抗感があったんです。「私たちの経験はこんな軽いもんじゃなかったよね」と。
不登校の認知や理解がどんなに広がっても、つらいものはつらい。私も、♪あんだんて♪さんの言葉をかみしめて、取材や学校選びのサポートを行っていきたいと思いました。
一方、相談会で来場者の方から話を伺う中で、変化を感じることもあります。その一つが、充実した居場所です。「別室登校」「保健室登校」「教育支援センター」「フリースクール」など、「自分の学級には通えていないけれど、ここには行っています」と現状を伝えてくださります。
私が学校に行けていなかった時にほしかったと思っていたのが、教室に行きたくない、自分のペースで勉強したいなどと思った時に使える専用の教室でした。今は、そんな専用教室がある学校も増えてきています。
自分の経験を振り返ると、保健室登校では「午後からは教室に行ってみない?」「昼休みだけでも一緒に遊ばない?」と声をかけられるのが苦痛でした。また、教育支援センター(適応指導教室)もバスと電車での通学はやっぱり遠かったです。
地元の学校に、“あなたの居場所はここにある” “ここにずっといてもいいんだよ”と認められている居場所があるのは、やっぱり安心です。
また、カウンセラーや医療が身近になってきていると感じます。私自身、病院に通っていることや診断名を言うことにすごく勇気がいります。でも、親御さんは、私たち通信制コンシェルジュを頼って、お子さんの状況を話してくれます。
「起立性調節障害と診断を受けていて、午後から通えるところを探しています」「聴覚過敏で、ヘッドフォンをしていても大丈夫な学校を知りたいです」などさまざまです。親御さんがお子さんと向き合って、「この子に合った次のステップをみつけたい」という思いがひしひしと伝わってきます。
子どもの世界は、家族と学校と狭いです。狭い世界でも、自分のことを受けとめてくれる家族や居場所を確保してくれる学校があるだけで救われます。そして、そこに新しく頼りになる人や視野を広げてくれる居場所が生まれると、もっと不安は解消されると思います。
でも、私がこんな風に思えるようになったのもここ数年のことです。自分自身の心境の変化や世の中の流れを感じながら、不登校や通信制高校のテーマにこれからも長く関わっていきたいです。