「気になりますね!通信制高校」
150人に聞いた通信制高校のあれこれ④
起立性調節障害だからチャレンジできる環境を
2025年1月15日
◇◇150人に聞いた通信制高校のあれこれ(4回連載)
第4回 起立性調節障害だからチャレンジできる環境を
◎選択肢の多さが気持ちを軽くした【体験談】通信制高校 1年生 IOさん
私は中1の頃に起立性調節障害になってしまって、それから中学卒業まで一切学校に行かなかったんです。
それまで起立性調節障害を発症するような予兆はなくて、普通に朝起きて「体調悪いな」と思いつつ中学に行ったら地球が回り始めたみたいな感じでした。
発症してから1~2カ月ぐらいは朝起きられないし、立てないし、家の中さえほふく前進するようにはいずり回るような状態でした。
中学時代はいろいろな治療を受けました。整体とか、それこそ大きな病院へ行って薬をもらって飲んだりとか、でもほとんど効果はなくて…。
お医者さまから言われたのは、時間がたつのを待つしかないということでした。成長期の自律神経の崩れなので、それが安定するのを待つしかないと言われました。
ああ…待つしかないんだって。「私、どうなるんだろう」という真っ暗な気持ちでした。
みんなが高校受験する時期になっても全く勉強していなかったです。それでお母さんに少しぐらいは進学先を選びなさいと言われて、学びリンクの通信制高校合同相談会に連れ出されました。
でも学校の個別ブースでの話は聞いていないです。その当時は2年ぐらい家から出ていないので、他人とどうやって話していいのかも分からないし、話したくもないからパンフレットだけもらってサッサと帰りました。
入学を決めた通信制高校はクラスが分かれていたのが一番良くて、毎日通う人、週1回通いたい人、ネットで授業を受けて通う人という3つに分かれていたので選び放題だと感じました。
それと、途中で変えられるというのもすごく利点だと思いました。通学型で毎日通うのが合わないんだったら週1回に切り替えて、それでも学校に行きたくない、つらいっていうんだったらインターネットでやればいいかなと学校生活のイメージが浮かびました。
学校が始まる時間が遅いというのと、ターミナル駅から近かったので遊んで帰れるという軽い気持ちもありました。
◎チャレンジして良かった!
高校進学してからも体調はほとんど変わらなくて「やばいな」みたいな気持ちだったんですけど、ある日突然、「あれ!? そんなに回らなくなってきたぞ! ほんとに時間がたったんだ」と気づきました。自分の成長が止まったっていうのもあったと思いますが、それから地球が回るような感覚はパッタリとなくなりました。それでもたまに起きるんですけど朝は強くなりました。
私は中学時代2年間勉強していなかったからこそ、高校で触れる勉強がすごく面白いんです。数学面白いってなったり、漢検の勉強をしてこんな漢字があるんだって気づいたり、知識が増えるのがうれしくて毎日通っています。
週5の通学コースに在籍しています。親から「毎日通いなさいよ!」っていう圧がすごかったので(笑)。
本当は、週5じゃなくて週1にしようと思ったんです。でも、お母さんに「毎日行ったほうが絶対良いよ! 週1だと週ごとの計画を立てなきゃいけないから無理じゃない?」と言われてその通りだと思いました。今は普通に通えているのでチャレンジして良かったと思っています。
毎日通学しているという時点で自分が成長したと思います。通学は自転車で最寄り駅まで行っているので「毎朝運動してる!」という気持ちになります。中学時代はフラフラしてしまうので自転車もこげませんでした。誰か支えてくれる人がいないと私は外に出られない状況が続いていたので、一人でいろいろな所に遊びに行けるのがすごく成長したと思います。
私の学校は英検、漢検などの検定に力を入れています。私は入学して漢検3級を取りました。3級は日常で使う漢字が多いんです。日常漢字が読めない書けないはさすがにやばいかなと思って、ひたすら1カ月間勉強して受かりました。
私の学校は専門学校の先生などが来てくれて授業をしてくれる時間もあります。ペットの専門学校ならワンちゃんに触れさせてくれます。映像系なら人気CMにどれくらいの費用がかかっているかと裏事情を話してくれて、どのお話も興味が尽きません。
その授業ですごく視野が広がりました。自分のやりたいこともそこで見つけたいと思っています。
◎チャレンジで「だいじょうぶ感」が育つ【解説】
学びリンク通信制高校合同相談会の「体験談を聴く会」で話してくれる在校生や卒業生には起立性調節障害を体験した人の話が多く出てきます。思春期に発症することが多い病気とも言われますが、症状が重い場合にはこの体験談のように学校生活どころか日常生活がたいへんなようです。
この体験談にも出てきますが、通信制高校は通学形態が週1・3・5日通学のいわゆる通学コースから月1~2回登校、年数日間の集中スクーリング、ネットコースなど多様な形態が選べ、しかも通学時間帯も選べる学校も多いため体調に合わせて学校生活を組み立てられるメリットがあります。
起立性調節障害だった体験談者からは、適切な治療とともに体調に合わせた通学ができる通信制高校などでの学校生活を通じて「病気が治った」という言葉もよく聞きます。
この病気が治ったというのは、「身体症状があっても、薬を服用せずに日常生活に支障が少ない状態」を指すということです。
症状が多少あったとしても、それ以上に体調に合わせながら価値のある生活を見つけた状態と言いかえることができるかもしれません。
この状態をつくるベースとして、『マンガ 脱・「不登校」 (起立性調節障害(OD)克服と「だいじょうぶ感」をはぐくむ) 』(発行:学びリンク)の著者で岐阜大学医学部教授の加藤善一郎さんは「だいじょうぶ感」という言葉を使っています。
「理由はともかく、なんだか自分(子ども自身)はだいじょうぶだと感じる」という感触を表す言葉です。
この体験談者も真っ暗だった気持ちから高校進学後(高校進学自体チャレンジでしたが)、体調改善もありさまざまなチャレンジに踏み出しています。そのベースにも「私はだいじょうぶ!」という気持ちの芽生えが伝わってきます。
チャレンジしようという前向きな気持ちが「それでもたまに(地球が回るような状態が)起きる」ことがあっても日常生活を支えているのだと思います。
●岐阜大学医学部教授 加藤善一郎さんの「だいじょうぶ感」についてはコチラをご参照ください
今回は、「起立性調節障害だからチャレンジできる環境を」についてご説明しました。いかがだったでしょうか?
次回からは新シリーズ、「通信制高校始まって以来の人気! でも続くの?」についてご説明します。
次回新シリーズもどうぞよろしくお願いします!