「気になりますね!通信制高校」
卒業後を見越した在学中の進路指導力②
大学進学は入るための準備とやめないための準備
2025年4月1日
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◇◇「卒業後を見越した在学中の進路指導力」(4回連載)
第2回 大学進学は入るための準備とやめないための準備
◎大学進学前にやっておきたい心身の準備このシリーズ1回目で通信制高校卒業時の「進路未定率」が高いのは、高校生時代の最大の経験機会(進路決定)を素通りしてしまった状態かもしれませんと述べました。
そして、卒業生アンケート調査結果から進路未定だった人のその後を見ると「何もしていない」状態になる人が多いことも説明しました。
ただし、全日制・定時制の「進路未定率」は横ばいなのですが、通信制高校は低下しています。図1で見てもらうように10年前の2014年度40%から23年度は28%へ10ポイント以上低下しています。
この低下の背景は、主に大学進学率が高まっていることによるものです。23年度は公立・私立通信制高校ともに初めて大学進学率が専門学校進学率を上回りました。
大学・専門学校合わせた進学率は私立校54%、公立校33%となり、私立校は初めて進学率が5割を超えました。
これからも大学等進学率アップが見込まれるため進路未定率は数年後には10%台後半まで下がると私は予測しています。

通信制高校卒業生アンケート調査結果からは通信制高校から大学進学した人の退学率の高さと退学後「何もしていない」状態になる人が多いことがわかりました。
学びリンクの通信制高校合同相談会で大学進学講演を行っている平野稔さん(学びリンク大学進学アドバイザー、元河合塾)は、通信制高校から大学進学する人に「入るための準備とやめないための準備をしておくことが大切」と助言しています。
不登校などを経験した人の大学に入る準備として、①現状を受け止め小さなことを積み重ね自信を回復する、②体調のリズムを整えるーなどをあげています。
やめないための準備では①対人コミュニケーション、家族以外の人と話し自分を説明できるようにする、②多様な人と違う価値観のなかでどう自分コントロールするかーなどをあげています。
大学のさまざまなサポート(学習、メンタル、就職など)についてもオープンキャンパスなどに出向いて確認することを勧めています。
また、保護者の方へのお願いとして①本人のつらさを理解し比べない(きょうだい、友だち、昔できたこと)、②家庭を安心できる場にするーなどをあげています。 大学選びを行う前にやっておきたい心と体調の準備があります。
◎退学後「何もしていない」状態へ


通信制高校卒業生アンケート調査結果から大学進学した人のその後を見ていきます。
表1で卒業時大学進学者の卒業後の経過を見ると、卒業2年後の2022年度卒業生は88%が大学在学中です。退学した人は24年度調査で9%となり、前回の23年度調査の3%と比べると格差があります。大学の退学率は2~3%と言われますから22年度卒業生は高い退学率と言えます。
卒業7年後までの経過を見ると退学率が上がり18%となります。これは23年度調査では20%でしたらからほぼ同様となります。大学生活後半で退学となる傾向が見られます。
退学した人の2年後現在を見ると在学中と在職中を合わせて46%となりますが、ほぼ同率の47%の人が「何もしていない」状態となっています。7年後現在では在職中が48%を占めるようになりますが、「何もしていない」状態の人も33%となっています。この傾向は23年度調査でも同様の結果となっています。
17年度卒業生からは母校への要望として「なんらかの理由で通うことができない学生さんが入学されることが多いかと思いますので、卒業後も在宅での生活が可能な選択肢を作るために通信制大学の紹介や将来的に在宅ワークの雇用につながるWEBマーケティング学習の講座があったら心強かったなと思います」というものがありました。
それでは、大学卒業した人たちはその後どうなっているでしょうか。表2はそれを見ています。
卒業7年後時点で聞いた17年度卒業生、16年度卒業生の調査結果から見ています。卒業まで至ったのは17年度 72%、16年度 72%で偶然にも同率です。
卒業後7年後現在の状況を見ると「在職中」が17年度 79%、16年度 82%と多数を占めています。
この一方で「何もしていない」状態の人が17年度12%、16年度13%と少なからずいます。この状態の人からの自由回答には体調を崩してしまったことなどの報告がありますが、それ以外のコメントはほとんどありません。
今回は、「大学進学は入るための準備とやめないための準備」についてご説明しました。いかがだったでしょうか?
次回は「専門学校進学は柔軟さから決められたカリキュラムへ」についてご説明します。
次回もどうぞよろしくお願いします!