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椎名雄一先生コラム『不登校に効く心理学の話』53
コミュニケーションにはコストがある

 2024年11月29日

 


カウンセリング室の椎名雄一です。
日々皆さんとメッセージのやりとりをさせていただいたり、カウンセリングをする中で気づいたことや傾向などをこのコーナーでお伝えしています。

私は仕事柄、1日に100件近いLINE相談を受けています。同じように見える相談でも文章の長さや構成、質問の仕方などによってかかる負荷、、コストが違います。

もっともコストがかかるのは
長文 + 質問が不明確 + ただただ情報や気持ちが書き込まれている
というスタイルのメッセージです。

まず長文全体に目を通して、不明確な「聞きたいこと」(質問)を推測する必要があります。次に必要な情報をメッセージの山の中からピックアップします。このような場合、得てして必要な情報が少ないことも多いので「いただいたメッセージから推測してお答えしますが」と前置きをして返信を書くことになります。質問が不明確なので「Aを知りたいのでしたらこれですが、もし質問したいのがBだとしたら、、、」と返信も長くなってしまいます。

一方で冒頭に質問を1行書いてくれる方もいます。

「新しいゲーミングPCを買って良いものかアドバイスをください」

冒頭にこれがあるだけで「ゲーミングPCを買ってよさそうか?」を中心に文章を読めば良いのでだいぶ楽になります。上記の「質問を推測する」という部分が終わっているからです。

これは質問者が前処理をしてくれているので質問に回答する側としてはコスト(労力)を抑えて質問に答えることができます。

状況説明も冒頭の質問に関係する部分だけ書けばいいので本文が格段に短くなります。

コミュニケーションはキャッチボールですから相手が取りにくい球を投げる人とグローブの中に投げ込んでくれるような人とではかかるコストが違います。

中には「我が家がどういう状況になっているか想像できますか?」のように聞いてくる方もいらっしゃいますが、説明してくれないものはわかりませんね。それを当てるとなると無理やり想像するコストと外した時にネガティブなことを言われてしまうコストなどがかかります。
ここまでは「メッセージでの質問の良し悪し」みたいな話ですが、これが一般のコミュニケーションでも出てきます。

「ただ気持ちを聞いて欲しいだけだったのにアドバイスされた」
「アドバイスが欲しかったのにただ聞いてくれただけだった」

人に相談した後にどちらの感想もよく聞きます。
なぜこうなってしまうかというと話し手が話す準備をあまりちゃんとせずに聞き手にコストを負担させようとするからです。

会話の冒頭に
「聞いてくれるだけでいいんだけれど」とか
「アドバイスが欲しいのだけれど」と目的を明確に示せばこのようなミスコミュニケーションは起きません。

コミュニケーションにはコストがかかるので、話し手と聞き手がどれくらい負担するかを意識してみると話の伝わり具合が格段に変わります。逆にコストを相手にかけてばかりだと「話が通じない」「めんどくさい人」と思われてしまい、距離を取られてしまいます。

「(不登校について)どうするの?」という問いに答えるにはどれくらいのコストがかかるかを一度じっくり考えてみることをお勧めします。