学びリンクで働く!元不登校・通信制高校卒業生のつぶやき
18:高校受験をドタキャンした私が大学受験を乗り越えられた理由
こんにちは。
学びリンク編集部で働いている、元不登校・通信制高校卒業生の柳野です。
このコラムでは、そんな私が通信制高校の専門出版社である「学びリンク」で働きながら感じたことを紹介します。
2024年が始まってから、1回目のコラムです。そして、コラム2周年目に入りました!まだまだ語り足りないこともありますので、本年もどうぞよろしくお願いいたします。
さて、先週末の1月13日(土)、14日(日)は共通テストでしたね。ゆっくりまったりの年末年始からいきなりの受験シーズン本番です。
自分が受験した6年前を思い出すと、今でも胸が熱くなります。それくらい私にとって、大きな経験で、今を生きる一つの糧になっています。なぜなら、全日制高校の受験をドタキャンした私が、大学受験は乗り越えられたからです。
詳しくは、コラム第2回:通信制高校へ入学を決めたのは中3の2月 その時、自分が変わるタイミングだったと、コラム第8回:通信制高校生だった日々を今振り返って思うこと④ やる気のトリガーをぜひご覧ください。
高校、大学の2つの受験を振り返って、不登校だった中学3年生の時にはなく、通信制高校生だった高校3年生の時にはあったもの。それは、受験に向けて一緒に頑張る「仲間」、大学に行きたいと思う具体的な「目的」、逃げたいと思った時に踏ん張れた確固たる「モチベーション」、心身ともに成長したという「自信」です。
まず、私の大学受験において、一番大きかったのが「仲間」の存在です。
高校受験をした中学3年時は、学校に行けず、一人で勉強をしていました。個別指導塾には通い、模試は受けていたものの、受験生という実感がなかなかわきませんでした。
先日、取材をした生徒も同じようなことを言っていました。彼は、絵に特化したコースがある通信制高校に通っている3年生です。
この高校に出会うまでは、僕の周りには絵に関心がある人があまりいなくて、一人で黙々と練習をしていました。でも、この高校に通うようになって、絵の上達には、他の人と高め合ったり、他の人から刺激を受けたりすることが必要なのだと気づきました。これは、ずっと学校に行っていなくて、人と関わる機会がなかった僕にとっては大きな気づきでした。こうした気づきがあったおかげで、僕自身、「まだまだ未熟で力不足なのだ」と知り、それを踏まえた上でより努力したことで、入学前と比べて、ぐんとスキルが上がったと実感しています。
彼のように、私も、大学受験に力を入れている通信制高校や予備校では、お互いに支え合い、高め合う仲間ができ、あきらめずに勉強を続けることができました。
次に、目的です。中学生の時は、とりあえず大学に進むために高校は行くものという抽象的な目的しか抱けませんでした。しかし、高校でオーストラリア留学を経験し、大学では別の国に留学したいという、具体的な目的ができました。
総合型選抜で大学合格をした通信制高校生もこう言っています。
もともと大学進学希望でした。地元が大好きで、地域活性に携わりたいとなんとなく考えていました。そんな中、高校の探究学習で、地域の伝統や文化をもとにアイディアを出して商品開発をしたり、地域のスポーツチームのボランティアをしたりして、地域活性への携わり方を学ぶことができました。これらの経験をもとに、地域活性と経済をより深く学べる大学を目指すようになりました。
高校で次のステップに繋がる経験を積むことが大事だとよくわかります。また、さまざまなことに挑戦できるのは、柔軟なしくみを持つ通信制高校ならではです。
また、私には、高校受験をドタキャンした経験から生まれたモチベーションもありました。「大学受験では、もう同じ経験を味わいたくない」という気持ちです。
それは、次の進路先に進む舞台に立てないことほど、悔しくてむなしいものはないと、中学生の時に身に染みた結果です。
そして、大学受験では、高校3年間で積み上げた自信が自分の背中を押してくれました。
私は中学生まで、テスト期間に入ると緊張と不安で、勉強に手がつけられなくなる子どもでした。高校受験前は塾にも行けなくなり、母がそばで見ていないと勉強ができない状況でした。高校受験本番に臨めるほど、成熟していなかったのです。
しかし、高校では、自分の心身の体調と向き合いながら毎日通えるようになったこと、学校行事や留学で率先して活動できるようになったこと、そして何より、朝から晩まで、教科書や単語帳がぼろぼろになるまで勉強したことが自信となりました。
大学受験本番は、こんなに頑張ったのだから無駄にしたくないという思いが強かったです。
これから、大学、高校と受験本番が続く中で、私のように、受験会場に行くことさえもままならない人がいると思います。「また、行けなかった…」と、どうしても自分のことを悲観してしまうでしょう。でも、それはただ、まだ準備ができていなかっただけなのです。
学びリンクから書籍を発行している、親子支援ネットワーク♪あんだんて♪代表で、臨床心理士・公認心理師の福本早穂さんは、書籍『みんないろいろありました 不登校あるある』の講演で、次のように解説しています。
不登校からの回復プロセスである「渋滞期」「葛藤期」「安定期」「始動期」「活動期」のそれぞれで、子どもたちに見られる“あるある”の言動があります。その中の始動期に起こる一つのあるあるが、「ドタキャン」です。
この講演を聴いた私は、救われました。大人になってから、「高校受験のドタキャンは、動き出そうとしていた証拠なのだ」と自分を肯定することができたのです。
受験に臨めなかったみなさん、動き出そうとした自分を褒めてあげてください。きっと今度は、今の自分より前進した景色が見えるはずです。