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学びリンクで働く!元不登校・通信制高校卒業生のつぶやき
22:あらゆるつらさを受けとめて対応してくれるSSWの重要性

 2024年6月19日

 


こんにちは。
学びリンク編集部で働いている、元不登校・通信制高校卒業生の柳野です。

このコラムでは、そんな私が通信制高校の専門出版社である「学びリンク」で働きながら感じたことを紹介します。

最近、スクールソーシャルワーカー(以下、SSW)について取材し、記事を作成しています。
不登校児童生徒数が小・中学校で約30万人いるとされる中、そのうちの約4割が学校内外の専門機関等で相談・指導等を受けていないとされる現在、専門家による教育相談体制の整備や関係機関との連携がより求められています(文部科学省:令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果)。

それに伴って、文部科学省は、スクールカウンセラー(以下、SC)とSSWの配置を年々、拡充しています。成立された令和6年度の予算を見ると、SCは全公立小中学校に週4時間、SSWは全中学校区に週3時間、配置するとしました。もっと支援を必要とする学校では、より長い時間、SCやSSWによるサポートを受けることができます。

文部科学省が発表した「令和4年度スクールソーシャルワーカー実践活動事例集」では、各都道府県が次の種別から選択して事例をまとめています。①貧困対策(家庭環境の問題、福祉機関との連携等)、②児童虐待(未然防止、早期対応、関係機関との連携等)、③いじめ、④不登校、⑤暴力行為、⑥非行・不良行為、⑦小中連携、⑧その他(発達障害等に関する問題、心身の健康・保健に関する問題等)、⑨性的な被害、⑩ヤングケアラー、⑪民間団体(NPO法人等)との連携、⑫教員とSSWの役割分担、⑬オンラインカウンセリングです。

事例を読んでいくと、「不登校」という一つの事案においても、学校に行かない、行けなくなったその背景には、貧困やヤングケアラー、児童虐待、発達障害など他の事案が隠れていたケースが多くありました。いずれのケースも、子ども本人やその保護者からの相談、異変に気づいた学校の先生やSCからの報告でSSWと繋がり、子どもが置かれる環境の改善に向かいました。

今回、SSWについて取材・調査をする中で、どうしても思い出してしまうのが、私が中学1年生だった時の経験です。私が学校に行ったり、行かなかったりを繰り返している中、当時高校1年生だった兄も不登校になりました。

その当時、精神的に不安定だった兄は、母や私に手を出すようになりました。そうした状況から回避するために、私と母は一緒に兄が落ち着くまでファミレスで時間を潰したり、祖父母の家で寝泊まりしたりすることもありました。でも、やっぱり兄を一人にはさせられないので家に戻ることを繰り返していました。母もだんだん疲弊していき、正常な判断ができないほど追い込まれていました。

ただ、実際には、私が中学生の時に抱えていた家庭の問題よりも深刻なケースがたくさんあります。でも、私のように、警察沙汰や児童相談所による保護まではいかないけれど、苦しんでいる子どもたちはどこに相談したらよいのでしょうか。どうしても聞きたくなって、今回取材をしたSSWの先生に再度質問をしてみました。

私:その当時、兄について、担任や保健室の先生に相談したんです。2人とも中学時代の兄を知っている先生だったので、正直、相談するのは躊躇しました。勇気を出して相談したんですけど、先生たちは「信じられない」「ちょっと対応しきれない」といった感じで、結局、話を聞くだけで終わってしまったんです。

SSW:その時の先生の対応は残念ですし、適切ではないですね。私だったら、家庭内暴力の相談窓口や電話相談、家庭環境や子育てなどについて総合的に相談にのってくれる子ども家庭センターを紹介します。事案やその重さはそれぞれですが、相談者にとって、それらは関係なく、困っていてどうにかしてほしいものですよね。あらゆるケースをこなすためにはやっぱり、SSWの数が必要です。

SSWの先生の意見を聞いて、私は「当時相談した学校の先生にちゃんと受け止めてもらいたかった。そして、何かしらアクションを起こしてほしかった」という、ずっと心の根っこに引っかかっていた思いが、10年以上経った今、流れた気がしました。

今現在、SCやSSWが常駐している学校は限られており、拠点校を中心に同じ学区内の学校を担当する形や、教育委員会に配置して地域内の学校に巡回または派遣する形などがとられています。SCやSSWの稼働時間が限られていたり、雇用形態が不安定だったりとまだまだ課題はあります。しかし、子どもたちのあらゆる困難をちゃんと受け止めて、アクションを起こせる専門家が身近にいるのといないのでは雲泥の差があると感じます。

結局、地元の学校にも行きたくない、家にいるのもつらい自分がたどり着いた選択が「山村留学」でした。地元・親元から離れ、自然豊かな農村漁村でホームステイや寮などで生活をしながらその地域の学校に通い、その地域ならではの体験ができる国内留学です。

学校に行けていない状態の自分が山村留学に行くことに、最初、両親は反対しました。しかし、中学1年生ながらもパワーポイントで資料を作り、両親にプレゼンテーションをして説得したところ、了承を得ることができました。

大人になってから、当時の話になった時、父から「あの時は、家にいたくなかったのか」と聞かれたことがありました。

正直、山村留学を決めた当時は、「今いる環境から逃げなきゃ、もう自分がだめになる」と思っていました。つらさの割合で言えば、地元の学校は40%、自分の家は60%くらいでした。でも、大人になった私は、父に向って、はっきりとその事実を伝えることはできず、言葉を濁しました。

なぜなら、山村留学の道を選んだことは一切後悔がなく、その道を選んだからこそ出会えた方々と得られた経験、気づかされたこと(これは後日、山村留学のテーマで話します)があったからです。

今振り返ると、山村留学は、自分にとっても、家族にとってもよい影響があったと考えています。幼少期から不登校をくり返していた私にとっては不登校を脱する機会にもなりましたし、自分らしい生き方をする第一歩目でした。また、兄はゆっくり休め、状態も落ち着きましたし、母も兄と向き合う時間をとれたのではないかと思います。

でも、もしも当時、自分がSSWと出会っていたら、適切な対応方法を知り、もっとお互いに傷つかずに済んだのではないかと思うところもあります。

今、何かしらつらいことを抱えていて、つらい現状を変えてほしいと思う子どもたちがいるならば、「SSWさんに相談したいです」と学校の先生や身近な大人にSOSを発してほしいと思います。きっと、SSWはあなたの思いをちゃんと受けとめて対応してくれるでしょう。